本書は、TOEIC600点または730点をめざす人のための中級学習者向けのトレーニング本だ。監修者は、米国宇宙船のアポロが人類初の月面着陸した時の通訳を担当した國弘正雄の弟子:千田潤一氏。
國弘正雄氏が只管朗読を説いたのに対し、千田氏も徹底的な英文の「音読」を勧めた。本書は、どうせ音読するならTOEIC公開テストに出題されるビジネス文書がよい、ということで、そうした素材ばかりを集めた音読用のトレーニング・ブックが本書だ。
千田氏はTOEIC試験を日本に根付かせた功労者であり、その理念に共感して、國弘氏が指導役を買って出て千田氏と親交を結んだらしい。私は、千田氏の教え子の岸洋一先生(本書の共著者)のTOEICトレーニング講座を受講した縁で本書にめぐり合った。正確には、本書の改訂前の初版だ。
このトレーニング本は、タイトルの通り実戦的で、使われている英文はすべて実際のビジネスシーンで使われる英語表現ばかり。まさにTOEICの素材そのものだ。TOEICテストのPART3をイメージした会話表現と、PART4をイメージしたナレーション表現が交互に出てくる。
英文自体はビジネスでよく使われる英語表現ばかりだが、730点目標にしては難しく骨がある。本書で音読トレーニングを積み、十分にマスターすれば860点突破も可能なレベルだ。
私は本書の改訂前版(中級トレーニング)を何度も音読練習して、860点を超えた。何度も繰り返しトレーニングを行い、自然と暗記して英文が口から出てくるようにすることがコツである。
「同時通訳の神様」と呼ばれた國弘正雄の只管朗読の境地を理解したい英語中級者には、ぜひ薦めたい一冊だ。