名門校には偏差値や大学進学実績では測れない価値があると言われています。名門校に受け継がれる人脈の壮大さ奥深さそして人間臭さを知ってしまうと、場当たり的な教育改革論議に対する違和感から逃れられなくなってしまうかも知れません。
そうしたことを提唱する教育ジャーナリストがいます。麻布高校および上智大学を卒業し、リクルートから独立して数々の教育誌デスクや監修を手掛けた、おおた としまさ さんです。そこで今日はこちらの本を紹介します。
おおた としまさ『名門校とは何か?人生を変える学舎の条件』(朝日新書)
この本は「名門校とは何か」、それを少しでも浮き彫りにしようということに狙いがあるということです。そのために著者のおおたさんは全国有数の名門校を訪ね、どんな生い立ちでどんな歴史を積み重ねて今があるのかを聞きました。
教員の思いの丈を受け取り、分厚い学校史にも目を通して、国内の名門校にはすべて足を運んだと述べています。一言に名門校と言っても様々で、この本では生い立ちによって学校を分類しています。構成は以下の9部から成っています。
1.日比谷高校の悲劇
2.旧制中学からの系譜
3.藩校からの系譜
4.女学校からの系譜
5.専門学校・師範学校からの系譜
6.大正・昭和初期生まれの学校
7.戦後生まれの星
8.学校改革という決断
9.単なる進学校と名門校は何が違うのか
それぞれの名門校の系譜・生い立ちから分類してのアプローチは伝統を論じるには理にかなった方法でしょう。理屈では説明できない「名門校」らしさという「味」は、歴史を知らねば分かりません。
それぞれの名門校の特徴、伝統の力については、ここで触れることは敢えてせず、「本を読んでのお楽しみ」とさせていただきます。
この本のもう一つの特徴は、巻頭と巻末の東大を筆頭とする旧帝大7大学への合格者数ランキングの記録です。巻頭では1960年代からの5年平均合格者数の実績、巻末では1990年以降の毎年の合格者数ランキングが掲載されています。
時代の変遷やその中で名門校がどのような実績推移を上げてきたかがよく分かります。自分の出身校を振り返ったり、最近時の状況を知ることもできます。
最後に「名門校」として、この本に採り上げられている高校を以下に挙げておきます。
1.日比谷(東京都・都立)
2.開成(東京都・私立)
3.麻布(東京都・私立)
4.浦和(埼玉県・県立)
5.濟々黌(熊本県・県立)
6.修猷館(福岡県・県立)
7.鶴丸(鹿児島県・県立)
8.修道(広島県・私立)
9.女子学院(東京都・私立)
10.雙葉(東京都・私立)
11.神戸女学院(兵庫県・私立)
12.浦和第一女子(埼玉県・県立)
13.慶應義塾(神奈川県・私立)
14.筑波大付属駒場(東京都・国立)
15.お茶の水女子大学付属(東京都・国立)
16.東京学芸大学附属(東京都・国立)
17.武蔵(東京都・私立)
18.桜蔭(東京都・私立)
19.東大寺(奈良県・私立)
20.灘(兵庫県・私立)
21.栄光学園(神奈川県・私立)
22.ラ・サール(鹿児島県・私立)
23.駒場東邦(東京都・私立)
24.聖光学院(神奈川県・私立)
25.渋谷教育学園幕張(千葉県・私立)
26.西大和(奈良県・私立)
27.海城(東京都・私立)
28.豊島岡(東京都・私立)
29.鷗友(東京都・私立)
30.堀川(京都府・市立)
皆さんも上記の各高校がどの系譜から出たものか、改めて「名門校」の底知れぬ伝統の力というものを考え直してみませんか。
では、今日もハッピーな1日を!