書評ブログ

中谷健一 『「どこでもオフィス」仕事術』 (ダイヤモンド社)

中谷健一氏は、大阪大学卒業後にリクルートに入社し、その後独立起業して、モバイル・マーケティング・コンサルタントとして活躍している。本書を出版後は、公式サイト 「どこでもオフィス仕事術」 を運営・管理している。

トリムタブジャパン有限会社の代表取締役で、青山に会社オフィスはあるものの、仕事の9割はクライアント先、喫茶店、移動中などに行うノマド・ワーカーだ。レッツノート、i Phone、モレスキンを携帯し、クラウドを活用しながら、日々 「働く場所」 を自由に選んでいる。

本書は、中谷氏が 「ノマドワーキング」 をいかにして実践しているかという、具体的なノウハウを惜しげもなく披露した書で、私がこれまで読んだビジネス書の中では、実践法 (携帯するツール、利用するオフィス場所、クラウド活用法など)が最も分かりやすく具体的に書いてある、「すぐれ本」 だ。

本書によれば、まずノマドワーキングの実践法は次の3点を整えることが基本となる。

1.「基本ツール」 をそろえる
2.「オフィス環境」 を整える
3.「デジタル管理」 を行う

まじは基本ツールだが、以下の3つが必須ガジェットだ。

1.ノートPC (レッツノートを推奨)
2.スマートフォン ( i Phone を推奨)
3.ノート (モレスキンのフォレオ・無地・A$サイズを推奨)

これは、先日、本ブログで紹介した 『ノマド出張術』 (実業之日本社)の著者、上田渉氏とまったく同じだ。上田氏の場合は3番目のモレスキンがB5サイズというのが異なるのみ。上田氏はこれも i Pad に代替されつつあるということだった。私も、i Pad の導入を目下、検討中だが、やはりアナログの手書きも完全には捨て切れないだろう。

次にオフィス環境については、①仕事の内容と、②設備と居心地という軸で、最適な場所を選んでいるということだ。著者によれば、プレゼン資料の作成などイメージや直感を大切にしたい仕事で短時間に仕上げる場合はマクドナルドを利用する。逆に、見積書の作成など論理的で緻密な作業が必要なもので長時間を要する仕事の場合は喫茶ルノアールを利用している。

会社をファーストプレイス、自宅を第セカンドプレイスとすると、それ以外の場所はサードプレイスと呼び、仕事の種類と滞在時間に応じて自由に選ぶのが 「ノマドッワーキング」 のライフスタイルだ。中谷氏のサードプレイスのメインは喫茶ルノアールとマクドナルドだが、それ以外の場所も具体的に紹介している。

サードプレイスの選択にあたりポイントになるのが、①設備(テーブル・イス)、②ネット(無線LAN)、③価格(ドリンク代)、④電源、⑤分煙、⑥セキュリティなどだ。これらの観点から、中谷氏が利用するサードプレイスとして推奨する場所を分類したものが以下の通りだ。具体的なノウハウとして本当に役立つ情報だ。

1.ルノアール     ; 設備◎、ネット◎、価格〇、電源〇、分煙〇、セキュリティ〇
2.スターバックス  ; 設備〇、ネット〇、価格〇、電源✕、分煙◎、セキュリティ〇
3.ドトール      ; 設備△、ネット〇、価格◎、電源✕、分煙✕、セキュリティ△
4.マクドナルド    ; 設備△、ネット◎、価格◎、電源〇、分煙◎、セキュリティ△
5.ファミレス     ; 設備〇、ネット△、価格〇、電源✕、分煙◎、セキュリティ〇
6.ステーション    ; 設備△、ネット◎、価格◎、電源✕、分煙◎、セキュリティ△
7.新幹線       ; 設備◎、ネット△、価格✕、電源△、分煙◎、セキュリティ△
8.レンタルオフィス ; 設備◎、ネット◎、価格✕、電源◎、分煙◎、セキュリティ◎
9.ネットカフェ     ; 設備◎、ネット◎、価格〇、電源〇、分煙〇、セキュリティ〇

これらのサードプレイスの評価や紹介は他書に類を見ない具体性と分かりやすさだ。これだけでも読む価値があるだろう。内容についても、私の利用・作業経験から照らしても概ね共感できる評価が大半だ。

また、クラウドのサービス活用についても、ドロップボックス、エヴァーナート、Gメール、グーグルドキュメントなど、定番のサービス紹介が分かりやすく役に立つ。本書は、ノマドワーキングを志す人には最適な入門書だ。心から推薦したい。