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三浦展 『日本人はこれから何を買うのか? 「超おひとりさま社会」の消費と行動』 (光文社新書)

三浦展氏は、1958年新潟県生まれで、一橋大学社会学部を卒業後、株式会社パルコに入社して、雑誌 『アクロス』 の編集長を務めた。その後、三菱総合研究所勤務を経て、1999年に独立し、マーケティング活動を行う。

家族、若者、消費、都市、階層化などを研究し、時代の流れを掴んで、さまざまな警鐘を発している。本書は、三菱総合研究所による全国47都道府県の20歳以上69歳以下の男女3万人へのインターネット調査をもとに、生活者の市場調査と分析を行った書だ。

とくに、近年および今後さらに急増する 「ひとり暮らし」 世帯を、「おひとりさま」 と呼んで、そのの消費動向を分析している点が興味深い。本書の構成は以下の4部から成っている。

1.老若男女すべて 「おひとりさま」
2.おひとりさま消費の現状
3.おひとりさまは何が欲しいのか
4.コミュニティという商品を買う時代

まず本書の冒頭で目を引くのが、国立社会保障・人口問題研究所の 『日本の世帯数の将来推計』 による、世帯数推移の予測数字だ。

2035年という、今から約20年後の日本を予測しているが、2010年時点のひとり暮らし世帯数1679万世帯が、2035年には1846万世帯に増加する。その間に、夫婦と子供の世帯は1477万世帯から1153万世帯に減少するため、ひとり暮らし世帯の方が6割も多くなる。

さらに問題なのは、50歳以上の一人暮らし世帯が838万世帯から1211万世帯に急増する。65歳以上としても498万世帯から762万世帯への急増だ。

要するに、中高年おひとりさまが単身世帯の主役になってくる。これまでの若者のワンルーム、アパート暮らしが主役ではない。

そうした大きな構造変化に伴い、おひとりさまの消費行動を男女別・年代別にみていくと、以下のように変化していく。私がとくに印象深かったものを紹介したい。

1.シニア男性は若者化し、食の洋風化・スナック化が進む
2.シニア女性はスポーツ、インターネットなどアクティブ化が特徴
3.若者男性は自動車から自転車へ、コンビニ依存度86%に
4.若者女性は寄付、信仰費、歯科医療費が伸びる
5.ミドル男性は快眠志向
6.ミドル女性は健康志向

その他、おひとりさまに共通する消費の特徴として、次のようなトレンドができてくる、としている。

1.生活全体に 「ケア」 が必要、とくにヘルスケア、知的ケア
2.コンビニおよび外食依存
3.食の安全、おふくろの味を求める
4.宅配ビジネスの拡大
5.マッサージも物からサービスへ

6.中古住宅リノベーション
7.新しい公共交通のニーズ
8.生涯学習のニーズ拡大
9.集合住宅のコミュニティ形成支援
10.「制約社員」 をケアする仕組み

買い物難民が、地方都市だけでなく、都会の郊外でも社会問題になっている。これからは、「コミュニティ」 という商品を買う時代になる、と著者は予言している。

今から20年後の2035年には、団塊世代は85歳以上に、団塊ジュニア世代も60歳以上になってくる。おひとりさまが急増し、しかも高齢者単身世帯という形態になるため、消費行動、生活行動は大きく変化するだろう。

今後のビジネスを考えていくうえで、本書は多くのヒントを提供してくれている。多くの人々に本書の一読を薦めたい。