外山滋比古さんのベストセラー著書『思考の整理学』読書版と呼ばれている書があります。「知の巨人」が思考を養い人生を変える読み方を伝授してくれます。本日、紹介するのはこちらの本です。
外山滋比古『乱読のセレンディピティ』(扶桑社)
この本は、2013年7月の「東京国際ブックフェア」での著者の講演「乱読のセレンディピティ」が元になって書かれたものですが、「読書と思考」に関する講演でした。
大半の内容は講演の後に書き下ろしたということで、講演の内容は本書のごく一部です。外山さんは外国語の読書でよく読めない辛さを味わったと述懐され、正しく読み取ることは困難だと述べています。
しかし一方で、それと同時にそういう間違いだらけの読みが思いもよらない発見をもたらすことに気付き、それを「セレンディピティ」のように思ったということです。
この本は、具体例によってそれを明らかにしようと試みたもので、まさに「乱読の功」を紹介した書です。「セレンディピティ(=Serendipity)」とは、「何かを探している時に探しているものとは別の価値あるものを見つける才能・能力」のことです。
本書は以下の16のテーマごとに整理されて乱読の具体例が紹介されています。
1.本はやらない
2.悪書が良書を駆逐する?
3.読書百遍神話
4.読むべし、読まれるべからず
5.風のごとく・・・・・
6.乱読の意義
7.セレンディピティ
8.「修辞的残像」まで
9.読者の存在
10.エディターシップ
11.母国語発見
12.古典の誕生
13.乱読の味方
14.忘却の美学
15.散歩開眼
16.朝の思想
以上の16テーマにわたって、「乱読の功」が説明されていて感銘を受けます。とくに私の印象に残った事例を以下に紹介します。
「速読」と「遅読」について、「十分で一冊読み上げる」などは雑な読み方しかできないが、一方でゆっくり丁寧に読めばいいと言うものでもない、と著者は言います。
外国語の場合もそうですが、流れを止めてしまい、むやみと時間をかけると、わかるものがわからなくなったりする、と言います。「風のごとく、さわやかに読んで」こそ、本はおもしろい意味を打ち明ける、ということです。
読み方には二種類あって、書かれていることがわかっている「アルファー読み」と、知らないことが書いてあるものを読む「ベーター読み」です。
ジャンルにとらわれない「乱読」ができるのは、「ベーター読み」のできる人です。小さな分野の中にこもらず、広く知の世界を好奇心に導かれて放浪するのが乱読です。
乱読の入門テキストとしては、新聞、雑誌です。雑誌は専門雑誌ではなく総合雑誌がいいということです。
思いがけないことを発見する能力をセレンディピィティ(Serendipity)と言います。読書の化学反応がセレンディピティで、乱読本は読む者に科学的影響を与えます。
皆さんもぜひ、乱読によるセレンディピティを経験し、広く知の世界に導かれてみませんか。
では、今日もハッピーな1日を!