ビジネス書を読もうと思うのだけど、なかなか読み始められない、書店でビジネス書を眺めるけれども、何を手に取ったらよいか決められない。そんな経験をされてる方はいませんか?
読書を楽しんで行うことができない人のために書かれたのが本日、紹介するこちらの本です。
矢島雅弘 『一冊からもっと学べるエモーショナル・リーディングのすすめ』 (ディスカヴァー21)
この本は、2005年より 「新刊ラジオ」 のパーソナリティとして、これまで約1,700冊の本を紹介してきたブックナビゲーターの矢島雅弘さんが、本を楽しく読む方法を説いた書籍です。
矢島さんが紹介してきたj本は、ビジネス書を中心に、文芸やサブカルチャーなど、様々なジャンルに及び、その簡潔で分かりやすい解説、ナレーションは多くの支持を受けています。
また、矢島さんは多くの経営者や著者へのインタビュー取材も行っていて、その気取らない雰囲気づくりにも定評があります。モットーは、「難しいことを、面白く分かりやすく」だそうです。
矢島さんがこの本で語っているのは、読書は単なる速読や多読ではだめで、真に役立つ読書とするためには、著者との対話である「エモーショナル・リーディング」を行うべきだと説いています。
矢島さんによれば、できる人は速読をしないと言います。ある程度の読書経験を重ねれば、自然と読書スピードは上がっていきます。読書を重ねて基本的な知識が備わったことで、結果的に本を読むことが速くなっているのです。
矢島さんが提唱する「エモーショナル・リーディング」は、次の3要素から成っています。
1.対話読書
2.エモーション・メモ
3.エモーショナル・アウトプット
このうち、基本は1番目の著者と対話しながら本を読み進めることで、本との距離を縮め、より能動的な姿勢で本と向き合いながら理解を深める、ということです。
2番目の「エモーション・メモ」というのは、本の要約ではなくて「感情」をメモすることです。要旨や結論ではなく、感情を揺さぶった文章を引用して記録し、それに対して感じたことをメモしていきます。
なぜ 「感情」 を重視するかと言うと、「記憶」と「モチベーション」が、感情によって大きな影響を受けるからです。人間の記憶には、短期記憶と長期記憶の2種類があり、長期記憶の中の「エピソード記憶」というのが体験に基づく記憶なので、最も忘れにくく、活用できる記憶だと言われています。
エピソード記憶とは、まさに感情を伴った記憶です。本から得た知識や情報は、無機的に覚えていこうとするよりも、感情を伴った方が忘れにくくなるのです。
また、1番目の「対話読書」をするメリットは以下の3点です。
1.感情や思考が具体的になる
2.読書が客観的にならない
3.興味が湧く
とくに肯定的な感情を持って対話する読書が有効なのですが、ビジネス書の中にある著者の原体験を「疑似体験」することが、肯定的読書には欠かせません。
「もし自分だったらそう考えられるか?」、「その状況で著者と同じ行動に出られるか?」 ということです。そして、矢島さんが強調しているのが、「著者が辿り着いた結論が他の著者と同じ言葉だったとしても、そこに至るまでの道は千差万別だ」ということです。
この本の後半では、「エモーショナル・アウトプット」について述べられています。これは、ラジオのパーソナリティとしてブック・ナビゲーターをしている著者の矢島さんが最も得意とするところです。
人に本を紹介することは難しいですが、ピッタリの本を紹介して喜んでもらった時の充実感は何物にも代え難いものがあります。私も多読の実践者として、よく本を紹介していますが、この本のやり方はとても参考になりました。
矢島さんは、この本の最後の方で、ビジネス書300冊の壁と1,000冊の壁ということを語っています。他の読書術をテーマとした本でも述べられていましたが、1000冊というキーポイントはあると感じています。
1,000冊を超えたあたりから、多読のレベルや次元も大きく変わっていく気がします。それは知識の蓄積であったり、多様な意見・価値観への理解ではないか、と推測しています。
この本の巻末には、矢島さん自身が大きな影響を受けた本が数冊、紹介されていて、これも参考になります。最も影響を受けたという1冊だけ、紹介しておきましょう。
P.F.ドラッカー 『P.F.ドラッカー 経営論』 (ダイヤモンド社)
読書が苦手と言う方も、この読書法はぜひ知っていて損はないと思います。
では、今日もハッピーな1日を!