よしもとばなな は代表作『キッチン』が30ヶ国語に翻訳されている売れっ子作家だが、詩人であり思想家であった吉本隆明氏の次女だ。
父親の堅い文章とは違う、軽やかな筆致が魅力だが、この本は彼女には珍しく、ハワイに通いながらフラを踊って感じたままを書いたエッセイだ。ハワイの魅力をいかんなく描き出している。
とくに、カイマナヒラ、つまりワイキキの象徴でもある「ダイヤモンドヘッド」を日本の富士山になぞらえている箇所は感動的だ。ワイキキのどのホテルにいても、海側のバルコニーから首を出すと、生き物みたいに目が合う。
湘南や静岡県あたりでふっと目線を遠くにやると、遠近が分からない感じで富士山がふっとあり、そのたたずまいは風景には決してとけこまない。その雰囲気がワイキキにおけるダイヤモンドヘッドにそっくりだと言うのだ。
(実際は、ダイヤモンドヘッドの方が富士山にそっくり、と書かれている。)
ハワイはどんな人にも、それぞれに合った楽園を見せてくれる。日本もかつてはそんな場所だったのではないか、というのが著者の想いだ。ハワイに恋しながら、日本にもう一度、恋をしたい。
ハワイの風景写真と、ハワイへの想い、日本の良さへの郷愁が見事にマッチした、素晴らしい本。ぜひ一読を薦めたい。