ちきりん氏は、関西出身で、バブル最盛期に証券会社で働いた経験を持つ。その後、米国の大学院留学を経て外資系企業に勤務して2010年に早期リタイアした。
現在は「楽しいことだけして暮らす」を実践中だ。本書は、学生時代からバックパッカーとして世界を旅してきた経験を踏まえ、崩壊前のソビエト連邦など約50ヶ国を実際に歩いて得られた「全く違う視点からモノを見る」ことの大切さを述べた書だ。
社会派ブロガーのちきりんさんは、「自分のアタマで考える」ことを信条とし、世界の様々な価値観にふれることで、さらにその独自の思考に磨きをかけている。
本書は、旅行エッセイであると同時に、著者の半生記でもある。著者が学生時代から30年間で訪れた約50ヶ国以上の国々で見たこと、聞いたこと、そしてそこで感じたことを、以下のトピック別にまとめている。
1.お金から見える世界
2.異国で働く人々
3.人生観が変わる場所
4.共産主義国への旅
5.ビーチリゾートの旅
6.世界の美術館
7.古代遺跡の旅
8.恵まれ過ぎの南欧諸国
9.変貌するアジア
10.豊かであるという実感
11.旅をより楽しむために
12.若者の海外旅行離れについて
13.すべての人に 「希望や自由や選択肢のある人生」 を
社会派ちきりんさんの旅する国々にはいくつかの特徴がある。まずは、共産主義の国々。それから美術館と古代遺跡、これは興味を持つ旅行者も多いだろう。次に、大自然。人生観が変わるのはそうした場所だという。
私の場合はセドナ (米国アリゾナ州)だった。大自然の迫力と地球の磁気エネルギーに圧倒された。さすがインディアンの聖地だ。
著者の場合は、新疆ウイグル自治区のウルムチ。何と人間がそのまま乾燥したミイラがウルムチの博物館にはある、という。そのミイラに関する記述は本書の中でも最も力の入った表現だった。
本書を通して追及しているテーマが「豊かさとは何か」という問いだ。アジアやアフリカの途上国、あるいはかつてヨーロッパ列強の植民地だった国々。
ちきりんさんの結論は、日本はいろいろあるけれども、ほんとうに恵まれた豊かな国だ、ということだ。生きて行く上で欠かせない「清潔な水」は安価に無限に手に入る。希望や自由、そして何よりも選択肢のある人生があることだ。
グローバル化が進み、世界がひとつになりつつある現在、本書は価値観が多様化する世界の潮流を、自分のアタマで考えるには格好の良書だ。ビジネスパーソンやトラベラーだけでなく、全ての日本人にぜひ、本書を推薦したい。