伊藤誠一郎氏は、ビジネスパーソンにプレゼンのやり方をコンサルティングする事業を行っており、趣味で旅行した時以来のファンとなったバス・ツアーの経験から、バスガイド研究家でもある。
本書は、企業の行うプレゼンと、バスガイドが行う旅行案内の共通点に焦点を当てた 「プレゼン術」 の本だが、思いのほかビジネス・プレゼンとバスガイドの共通スキルがあることに驚いた。
本書によれば、プレゼンは準備が9割、本番が1割のウエイト配分だ。まず、プレゼンの構成として、以下の3点を最初にのべることが大切だ、という。
1.テーマ: 何についての話なのか
2.結 論 : 何が言いたいのか
3.目 的: 何を目的として、ポイント(できれば3つ)は何なのか
以上の3点は、バスガイドで言えば、①旅のテーマ、②目的地、③見どころ(3ヶ所)、ということになる。バス・ツアーの場合はつねに今、旅行工程のどこにいるのかを乗客に意識させるが、ビジネス・プレゼンもそれと同じだ。
次に、重要ポイント3点(3ヶ所の見どころ=観光スポット)だが、これはプレゼンの本論に当たる部分なので、シナリオを作るべきだ。基本は、①下地作り、②展開、③仕上げ、の3部構成だ。
具体的には、プレゼンの冒頭は次のような展開になる。
1.まず、今日は 「このテーマ」 についてお話します。
2.私はこれについて、「このような結論」 と考えます。
3.ぜひ皆さんに、「この目的」 をしていただきたいので、「論点1」、「論点2」、「論点3」 という順番で進めていきます。
このような基本の 「型」 をしっかりと準備してプレゼンに臨むことが大切だ。
それから、構成ができたら練習が重要だ。企業のプレゼンではこれが圧倒的に不足している。準備9割のうち3分の1、全体の3割は練習にあてるべきだ。
プレゼンの練習には、歩きながら練習がいいという。それは、①外を見ながら(聴衆に視線)、②雑音の中で、③リズム感っを持って、練習できるからだ。
プレゼンテーションは聴き手を楽しませるものなので、自分がプレゼンを楽しむように進めなければならない。緊張した表情で堅苦しい言葉を並べてはだめだ。
プレゼンターの心構えとして、最後に著者は次の7つを挙げて本書を締めくくっている。
1.How To より、How Wonderful を伝える
2.比喩表現と 「 」 の会話形式を使う
3.3つのポイントにまとめる
4.超ポジティブなキャラクターを演じる
5.お手本のプレゼンターのコピーから始める
6.興味・関心を持って、日頃から人の話をよく聞く
7.プレゼンの機会を自ら作り出す
以上の心構えが大切になるのだ。
ビジネスのプレゼン上達に悩む人々は多い。競争がますます厳しくなる中でプレゼンのスキルは重要性を増している。多くのビジネスパーソンに本書の一読を薦めたい。