岡部正氏は、昭和28年生まれの医学博士で、糖尿病の専門医だ。亀田総合病院副院長を経て、現在は銀座で岡部クリニックを開業している。
岡部氏の説明はとても分かりやすく、豊富な臨床経験に裏付けられた主張は説得力がある。本書を読み始めるとすぐわかるが、ソフトな語り口が信頼感を醸し出している。
まず、本書では50歳が寿命を決める分かれ道だと説いている。ここからの生活習慣で、平均寿命もだが、とくに「健康寿命」 が決められる、というのだ。今は医学の進歩で、介護されながら長く生きることも多い。
簡単に、楽に死ねるわけではない。自立して健康的な生活ができる「健康寿命」の平均は、男性70.4歳、女性73.6歳で、平均寿命との差である男性で約9年、女性で約13年は介護を必要として生きる年月だ。
本書の結論は、長寿に深い関係がある「アディポネクチン」という物質が体内に多い人ほど長生きすることが解明され、それは肥満になる程、減っていくということだ。
アディポネクチンは、長寿ホルモンと呼ばれるゆえんであり、医療機関で保険適用外だが血液検査で測定できるので、重視して健康管理をすべきだ。
アディポネクチンを増やして健康寿命を伸ばすには、50歳からの生活習慣が何より大切で、基本は減量による糖尿病予防だ。糖尿病は、それ自体で自覚症状が無く、健康診断で指摘されても放置する人が多い。
しかし、血液中の血糖値を高いままにしておくと必ず、合併症を引き起こし、重篤な成人病となる。人工透析や失明、高血圧、動脈硬化、心筋梗塞など生命に関わる病が発生してしまう。
50歳からの生活習慣により、血糖値を下げておくことが大切だ。基本は食生活の改善と適度な運動だ。以下の習慣がよい。
1.DHAやEPAを多く含む青魚を食べる、野菜からゆっくり食べる
2.朝食を毎日食べる。満腹にならず、薄味で食べる
3.週に3回、系90分の適度な運動をする
4.タバコを吸わない
5.お酒をあまり飲まない
6.20歳の頃からの体重変化が5キロ以内に減量
以上の習慣が大切だ。また、がんにならない8項目は以下の通り。
1.太らない
2.脂肪を摂り過ぎない
毎日いろいろな種類の野菜を食べる
4.お酒はほどほどに
5.タバコは吸わない
6.塩辛いものは控えめに
7.焦げた部分、カビのはえたものは食べない
8.食品の亜硝酸塩(ハム、ソーセージの味付け剤)、過酸化脂質(古い油)に注意する
がん予防にはアディポネクチンを増やすことが何よりも重要ということがわかっている。上記6つの警察習慣と共通することがわかるだろう。
最後に、3つの「気」を著者は提唱している。「動機」、「知識」、「根気」の3つだ。これらを持って、ぜひ生活習慣の改善に取り組もう。
人生後半の優先順位は、大橋巨泉氏が言うように、まず「健康」だ。50歳前後の人のみならず、若者にも本書を一読し生活習慣の改善に取り組むことを薦めたい。