「人間は、幸せになるために生まれたのではなく、生存するためにつくられた動物なのだ。」― ポジティブ思考や努力によって幸福になれるという従来の考え方に疑問を投げかけ、進化心理学の視点から人間の幸福の本質を解き明かし、人生をもっとシンプルに生きるための考え方を提案した本があります。

本日紹介するのは、延世大学を卒業後、米国イリノイ大学で幸福心理学の創始者エド・ディーナーの指導を受けて心理学博士号を取得。カリフォルニア大学アーバイン校心理学科の終身教授を経て、現在は延世大学心理学教授を務め、2011年のグローバルプロジェクトで「世界100人の幸福学者」に選ばれた進化心理学者のソ・ウングクさんが著し、『言ってはいけない 残酷すぎる真実』などのベストセラーで知られる作家・橘玲(たちばな・あきら)さんが解説を担当した、こちらの書籍です。

ソ・ウングク著(橘玲・解説)『幸福についての世界でいちばん冷酷なお知らせ:進化心理学が教えてくれる“きれいごと抜き”の人生戦略』(東洋経済新報社)

私たちは、どうすれば幸せになれるのでしょうか。仕事で成功すること、お金持ちになること、社会的な地位を得ること、あるいは前向きな考え方を身につけること。

幸福については、これまでさまざまな方法が提唱されてきました。しかし、本書の著者は、人間はそもそも「幸せになるため」に進化してきたわけではないと指摘しています。

進化心理学の視点では、人間の心や感情も、生存と繁殖に関わる課題に対応するために進化してきたものと考えられます。幸福感も例外ではありません。

著者は、幸福を人生の最終目的として捉えるのではなく、生存に役立つ行動を促す心の働きとして理解しようとしています。

この考え方に立つと、幸せになるために無理にポジティブ思考を続けたり、社会的な成功を追い求めたりする必要はないのかもしれません。

本書では、進化心理学と幸福研究の知見をもとに、人間関係、遺伝と環境、幸福感の持続性、個人の性格など、さまざまな角度から幸福の本質を考察しています。

さらに、人間関係が幸福感に与える影響や、遺伝と環境が個人の幸福にどのように関わるかについても取り上げています。本書は、幸福を精神論として語るのではなく、人間という動物の特性から理解しようとする一冊です。

本書は以下の9部構成から成っています。また、巻末には、Q&A「よりよい人生のための『5つの質問』」と、作家・橘玲さんによる解説者あとがきが収録されています。

1.「ポジティブ思考」という非科学的カンチガイ

2.念のため。人間は100パーセント動物だ

3.ダーウィンとアリストテレスに聞いてみよう

4.あなたの目的は「生存」

5.人生は人間関係が10割

6.幸福には「賞味期限」がある

7.結局「生まれ」か「育ち」か

8.「空気を読まない人」が最強の理由

9.もっと自分をシンプルに考えていい

 

本書の前半では、進化心理学から見た人間の幸福の本質について、以下のポイントを説明しています。

◆ ポジティブ思考だけで幸福になれるという考え方には限界がある

◆ 人間の心や感情は、生存と繁殖に関わる進化の過程で形成されてきた

◆ 幸福感は最終目的というより、生存に役立つ働きとして理解できる

◆ 人間を特別な存在ではなく、動物として捉える

◆ 幸福を考えるには、人間の本能や進化の仕組みを理解する

 

この本の中盤では、人間関係と幸福感の関係について解説しています。主なポイントは次の通り。

◆ 人間は社会的な動物であり、他者との関係が幸福感に大きく影響する

◆ 人間関係の充実は、物質的な豊かさとは異なる幸福の源泉になる

◆ 幸福には「賞味期限」があり、喜びや満足感は時間とともに薄れていく

◆ 大きな幸福を一度味わうより、小さな幸福を頻繁に感じる

◆ 幸福感には遺伝と環境の両方が関わり、努力だけでは決まらない

 

本書の後半では、自分らしい生き方と幸福との関係について考察・提言しています。主なポイントは以下の通りです。

◆ 周囲の評価や社会の常識に振り回されすぎない

◆ 自分の性格や特性を理解し、無理のない生き方を選ぶ

◆ 幸福を過度に追い求めると、かえって重圧になることもある

◆ 自分に合った環境や人間関係を大切にする

◆ 人生を複雑に考えすぎず、日常の小さな喜びを味わう

 

本書を読んで最も印象に残ったのは、「幸福の大きさよりも、幸福を感じる頻度が重要である」という点です。

人生100年時代には、仕事で大きな成功を収めたり、多額の資産を築いたりすることだけが幸福ではありません。

家族や友人との会話、好きな仕事や趣味に取り組む時間、日々の小さな達成感など、身近な喜びを積み重ねることが大切だと思います。

とくに定年後の人生では、社会的な地位や収入だけでなく、人とのつながりや自分らしい時間の使い方が幸福度を左右するでしょう。

もちろん、進化心理学による説明だけで、人間の幸福のすべてが解明されるわけではありません。それでも、幸福を過度に追い求めるのではなく、自分の特性を理解し、日常の中に喜びを見つけるという視点は、これからの人生設計に大いに役立つと感じました。

「幸福とは、人生のゴールとして追い求めるものではなく、日々の暮らしの中で何度も感じるものである。」
幸福学や進化心理学に関心のある人、人生の価値観を見直したい人、そして定年後の人生を自分らしく幸せに生きたい人に、ぜひ読んでほしい一冊です。

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では、今日もハッピーな1日を!【4256日目】