「日本に押し寄せる中国『新移民』とは何者なのか?」― 湾岸タワーマンション、中学受験、銀座の会員制クラブ、北海道ニセコへの投資。いま日本社会のさまざまな場所で存在感を増している、中国から移り住む人々。中国で流行する「潤(ルン)」という言葉を手掛かりに、新しい中国人移民の実像を追ったノンフィクションがあります。

本日紹介するのは、1985年福岡県生まれ、カリフォルニア大学で国際関係修士を取得し、2010年に中国の経済メディアへ入社して日本を中心とする国際報道を担当、2014年から2016年までシンガポール国立大学研究員を務め、2022年からNHKラジオ「マイあさ!」でアジア情勢を解説、現在は日本語・英語・中国語・インドネシア語の4カ国語でアジアの現在を発信している中国・東南アジア専門ジャーナリスト、舛友雄大(ますとも・たけひろ)さんが著した、こちらの書籍です。

舛友雄大『潤日(ルンリィー):日本へ大脱出する中国人富裕層を追う』(東洋経済新報社)

 

「潤」とは、より良い暮らしを求めて中国から国外へ移る人々を指して近年使われるようになった言葉です。中国語のピンインで「Run」と表記されることから、英語の「run=逃げる」とも重なります。

そして、日本を移住先として選ぶ動きが「潤日」です。ただし、本書を読み進めていくと、「潤日」を単純に「中国人富裕層による日本への移住」とだけ捉えることができないことが分かります。

湾岸タワーマンションを現金で購入する富裕層、子どもの教育環境を求める家庭、事業家や投資家、日本の地方へ進出する人々、将来への不安を抱える中間層、さらには知識人や政治的な背景を持つ人まで、その動機も属性もさまざまです。

なぜ中国を離れるのか。なぜアメリカやシンガポールではなく、日本なのか。日本で何を求め、どのようなコミュニティを形成しているのか。著者は当事者への取材を重ねながら、その多面的な実像に迫っていきます。

本書は以下の9部構成から成っています。

1.世界の現象としての潤

2.タワマンに住む人々

3.新お受験戦争

4.引退組企業家安住の地

5.独自のエコシステム

6.地方という開拓地(フロンティア)

7.焦燥する中間層

8.リベラル派知識人大集結

9.抗議者、小粉紅、支黒、大外宣

 

本書の前半では、「潤」という世界的な現象と日本へ移住する富裕層について、以下のポイントを説明しています。

◆ 「潤」は、より良い生活環境を求めて中国から国外へ移る動きを表している

◆ 日本は地理的な近さや生活環境などから、移住先の一つとして選ばれている

◆ 湾岸タワーマンションなど、日本の不動産市場にも新しい需要を生み出している

◆ 富裕層の関心は資産だけでなく、子どもの教育環境にも向けられている

◆ 日本への移住には、資産、教育、仕事、生活など複数の動機が重なっている

 

この本の中盤では、日本国内で形成される新しいコミュニティについて紹介・解説しています。主なポイントは次の通り。

◆ 中国から移住した人々の間に、ビジネスや生活を支える独自のネットワークが形成

◆ 経営者や投資家には、日本を新しい生活や事業の拠点として選ぶ人も

◆ 東京だけでなく、北海道など地方も投資や移住の新たな選択肢に

◆ 富裕層だけではなく、将来への焦りを抱える中間層にも国外移住への関心が広がり

◆ 「潤日」は、不動産、教育、地域経済など日本社会のさまざまな分野と結びつき

 

本書の後半では、「潤日」のさらに多様な側面について解説しています。主なポイントは以下の通りです。

◆ 日本へ移る人々には、知識人など経済以外の理由を持つ層もいる

◆ 中国社会への考え方は、移住者の間でも一様ではない

◆ 日本国内にも多様な中国語圏のコミュニティが生まれている

◆ 「潤日」を富裕層の資産移動だけで捉えると、全体像を見誤る

◆ 人の移動を通じて、中国社会と日本社会の変化が同時に見えてくる

 

本書を読んで最も印象に残ったのは、「潤日」という現象を通して、現在の中国と日本の双方が見えてくるという点です。

中国から人や資産が動く背景には、経済だけでなく、教育、仕事、生活環境、将来への価値観など、さまざまな要因があります。

一方、日本側から見れば、住宅市場、中学受験、観光・リゾート開発、地域経済などに新しい動きが生まれています。とくに重要なのは、「中国人富裕層」という一つのイメージだけで判断しないことでしょう。

富裕層、中間層、経営者、知識人など、置かれた状況や日本へ来る理由は大きく異なります。人口減少が進む日本にとって、海外から移り住む人々とどう共生し、その力を社会や地域の活力につなげるのかは、今後さらに重要なテーマになります。

「潤日」は中国の変化を映すと同時に、これからの日本社会を映す鏡でもある。
中国経済や中国社会の変化に関心がある人はもちろん、不動産、教育、地方創生、人口減少、外国人との共生など、日本の未来を考えたい人にも、ぜひ読んでほしい一冊です。

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では、今日もハッピーな1日を!【4227日目】