「中国経済は崩壊するのか、それとも持ちこたえるのか――」
そんな問いに対して、不動産という一点から、中国社会の深層構造をえぐり出す一冊があります。

本日紹介するのは、1963年中国・南京市生まれ。1988年来日後、愛知大学、名古屋大学大学院で学び、長銀総合研究所、富士通総研研究所を経て、現在は東京財団政策研究所主席研究員、静岡県立大学グローバル地域センター特任教授を兼務する中国経済研究の第一人者として、テレビ・新聞・雑誌など数多くのメディアで活躍し続けている柯隆 さんが書いた、こちらの書籍です。

柯隆『中国不動産バブル』(文春新書)

 

本書は、中国の不動産バブルを「価格の上下」という表層現象ではなく、金融・行政・政治・社会制度までを貫く巨大な構造問題として描き切った決定版です。

不動産バブルの崩壊は、単なる経済調整にとどまらず、共産党統治体制そのものを揺るがしかねない――そんな危機感が、全編を通して貫かれています。

本書は以下の10部構成から成っています。

1.中国の不動産で何が起きているのか

2.土地の公有制と戸籍管理制度

3.地方政府と都市再開発

4.「失われた30年」への道

5.絶望する若者たち

6.貯蓄・消費・投資の特殊性

7.マネーゲームと金融危機

8.イデオロギーの呪縛

9.コロナ禍が遺したもの

10.習近平政権の正念場

 

本書の前半では、中国不動産市場で起きている異変が、極めて具体的に描かれます。大都市の価格下落やゴーストタウンの増加は、氷山の一角にすぎません。主なポイントは以下の通りです。

◆ 大都市でも進む不動産価格の下落

◆ 建設途中で放置される巨大プロジェクト

◆ 中国政府が不動産開発を推進してきた本当の理由

◆ 地方政府が「土地財政」に依存せざるを得なかった構造

◆ 不動産が中国経済のエンジンになった必然性

 

この本の中盤では、不動産問題が中国社会全体の歪みと直結していることが明らかになります。土地制度、戸籍制度、金融システムが絡み合い、逃げ場のない構造を生んでいます。主なポイントは次の通り。

◆ 土地の公有制が生む独特のマネー循環

◆ 共産党幹部とデベロッパーの癒着構造

◆ 賄賂と不動産が結びついた巨大なマネーゲーム

◆ 地方財政の破綻が年金問題に直結する現実

◆ 若者が未来に希望を持てなくなっている理由

 

本書の後半では、バブル崩壊後の中国が直面する「選択の難しさ」が描かれます。統制を強めれば経済は萎縮し、自由化すれば体制が揺らぐ――まさに正念場です。主なポイントは以下の通りです。

◆ 貯蓄偏重社会が消費を生まない構造

◆ 若者の絶望と海外脱出の加速

◆ 金融危機が政治リスクへ転化する可能性

◆ イデオロギーが経済合理性を縛る現実

◆ 習近平政権が迎えている歴史的な分岐点

 

中国不動産バブルは、「中国だけの問題」ではありません。日本企業、金融市場、世界経済にとっても、これは確実に影響を及ぼす「チャイナ・リスク」です。感情論や楽観論ではなく、制度と構造から中国を理解したい人にとって、本書は必読の一冊だと感じました。

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では、今日もハッピーな1日を!【3948日目】