「“見捨てられた1700万人”はそこまで悲惨ではなかった」――そんな挑発的なメッセージを投げかける一冊があります。
本日紹介するのは、1964年東京生まれ、大手メーカーを経てリクルートエイブリック(現リクルートエージェント)に入社。その後リクルートワークス研究所にて雑誌『Works』編集長を務め、2008年にHRコンサルティング会社サッチモを立ち上げた雇用ジャーナリストであり、大正大学表現学部客員教授で、漫画『エンゼルバンク――ドラゴン桜外伝』の主人公モデルとしても知られ、人材・経営誌『HRmics』編集長やリクルートキャリアフェロー(特別研究員)を務め、著書は30冊以上、近著『静かな退職という働き方』も話題となっている海老原嗣生(えびはら・つぐお)さんが書いたこちらの書籍です。
海老原嗣生『「就職氷河期世代論」のウソ』(扶桑社新書)
この本は、就職氷河期世代をめぐる “誇張されたイメージ” に鋭くメスを入れ、政策と社会の在り方を問い直すと同時に、世代支援というより、真に困難に直面する人々をどう支えるかを考える上で、必読の一冊です。
本書は以下の9部構成から成っています。
1.氷河期世代問題にまつわる違和感
2.「偽りの氷河期問題」に惑わされてきた
3.「偽りの氷河期問題」を増幅させた2つの誤解
4.氷河期問題を見誤らせる5つの社会変化
5.少子化は ”氷河期のツケ” ではない
6.超氷河期の就活を、企業名と大学名でたどる
7.誰が氷河期問題をこじらせたのか?
8.本当に効く雇用対策を提案する
9.現実を見ることは、氷河期世代支援にもつながる
この本の冒頭で著者は、「多くが就職できず、熟年非正規があふれ、貧困で年金も少なく、国に見捨てられた……という氷河期世代イメージは誇張である」と断じ、現場経験とデータをもとに徹底検証を試みています。
本書の前半では、「偽りの氷河期問題」と呼ぶ報道や言説が、いかに社会に浸透してきたかを明らかにしています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 氷河期世代=非正規だらけというイメージは事実と異なる
◆ 大卒男性の非正規比率は40代前半でわずか4%程度
◆ 真に支援が必要なのは女性と非大卒層
◆ 政府は当初から雇用対策を打ち続けてきた
◆ マスコミ・政治家・官僚が氷河期論を好む背景がある
この本の中盤では、社会構造の変化や世代間比較の誤解を整理しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 氷河期世代だけでなく下の世代も年収は低迷している
◆ 低年金者は氷河期よりバブル世代に多い
◆ 少子化は氷河期の就職難とは直結しない
◆ 大企業の採用実態を大学別に追うと、氷河期像の実情が見える
◆ 「誰が問題をこじらせたのか」という責任の所在を問う
本書の後半では、現実に即した政策提言が展開されます。主なポイントは以下の通りです。
◆ 世代で括るより「本当に困窮している層」に焦点を当てるべき
◆ 氷河期支援予算は令和以降も年200億円規模で投じられている
◆ 雇用対策は、ミスマッチを解消する仕組みが重要
◆ データを冷静に見て政策を設計することが不可欠
◆ 「現実を直視することこそ、氷河期支援につながる」と強調
この本の締めくくりとして著者は、「世代論に惑わされず、困っている人を正しく支援するためにこそ、現実を見ることが大切だ」と述べています。
あなたも本書を読んで、真に困難に直面する人々をどう支えるかを考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【3852日目】