「やる気があるから行動するのではなく、やる気がなくてもまず行動する」――そんな逆説的でありながら、深い真実を突くメッセージから始まる一冊があります。
本日紹介するのは、東京大学理学部・法学部卒業後、同大学院理学系研究科物理学専攻課程を修了、理学博士として理化学研究所やケンブリッジ大学を経て現在に至る、東京大学大学院客員教授及び特任教授、ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員、脳科学者の茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)さんが書いたこちらの書籍です。
茂木健一郎『生きがいの見つけ方 生きる手ごたえをつかむ脳科学』(PHP新書)
本書は、世界32の言語、57か国で出版され、ドイツ2024年ノンフィクション部門年間1位となるなど、世界中で注目された著者初の英文著作『The Little Book of Ikigai』の本質に迫る日本語版ともいえる内容です。
「自由意志は幻想であるかもしれない」という脳科学の視点から出発しながらも、人はどうすれば生きがいを感じながら生きられるのか――その答えを、行動科学と脳科学の融合から探ります。著者は、私たちの行動や選択が環境や脳の状態に強く影響されるとしながらも、悲観するのではなく、むしろ「行動」こそが生きがいを生む鍵であると断言します。
たとえば、朝ふとランニングに出かけたとき、道端をひらりと舞う蝶を目にして「生きている」という実感が湧く――そんな小さな瞬間こそが、生きがいの原点だと説きます。大きな目標や崇高な使命がなくても、日々の小さな行動が意味や価値を生み出し、やがて人生の手応えを取り戻すのです。
本書は以下の11部構成から成っています。
1.生きがいとは何か
2.自由意志はあるのか
3.偶然とは何か
4.無意識の耕し方
5.行動が感情をつくる
6.人とつながる脳の働き
7.スマホ依存の脳科学
8.人工知能と言語のパラドックス
9.究極の質問と理解できない答え
10.「私」が「私」である謎
11.人生と記憶
この本の冒頭で著者は、「生きがいは、突然天から降ってくるような大きな出来事ではなく、日々の小さな行動の積み重ねから生まれる」と語ります。やる気や自由意志に頼らず、まずは動くことで感情が後からついてくる――その脳科学的背景を、平易な言葉で解き明かしていきます。
本書の前半では、「生きがいとは何か」「自由意志はあるのか」「偶然とは何か」および「無意識の耕し方」について、以下のポイントを説明しています。
◆ 生きがいは特別な才能や目標からではなく、小さな行動と日常の体験から生まれる
◆ 自由意志は完全ではなく、環境や脳の状態が意思決定に強く影響している
◆ 偶然の出来事は脳を刺激し、新たな発想や行動を生む契機となる
◆ 無意識を意図的に耕すことで、創造性や行動意欲が自然に引き出される
◆ 行動を起こすきっかけは外部からもたらされることが多く、それを活かす感性が重要
この本の中盤では、「行動が感情をつくる」「人とつながる脳の働き」「スマホ依存の脳科学」および「人工知能と言語のパラドックス」について考察しています。主なポイントは次の通り。
◆ やる気は行動の結果として生まれるものであり、最初から必要ではない
◆ 人との交流は脳の報酬系を活性化させ、生きがいを感じやすくする
◆ スマホ依存は脳の注意力や集中力を分散させ、生きがいの感覚を希薄にするリスクがある
◆ AIは言語の意味を深く理解できず、人間ならではの感情や価値観を持てない
◆ 人間らしさは感情・身体感覚・関係性の中に宿り、それが生きがいを支える基盤となる
本書の後半では、「究極の質問と理解できない答え」「『私』が『私』である謎」および「人生と記憶」について解説しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 人生の意味や存在の本質といった究極の問いは、簡単に答えが出るものではない
◆ 自己同一性の感覚は、記憶や体験の積み重ねによって形づくられる
◆ 記憶は人生の物語を編み、生きがいを再確認させる
◆ 理解できないことを受け入れることが、人間の深みを増す
◆ 生きがいは過去・現在・未来の物語をつなぐ中で、静かに形を成す
この本の締めくくりとして著者は、「生きがいは、あなたが日々動く中でふと感じる一瞬にこそ宿る。それを大切にしながら、生きる手応えをつかんでほしい」と述べています。
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では、今日もハッピーな1日を!【3812日目】