書評ブログ

『田舎暮らし毒本』

「田舎暮らしには“キレイゴト”だけでは語れない現実がある」――そんな強烈なメッセージとともに、20年以上の移住生活を送る作家が警鐘を鳴らす一冊があります。

本日紹介するのは、アウトドア小説の第一人者・樋口明雄さんによるこちらの書籍です。

樋口明雄『田舎暮らし毒本』(光文社新書)

 

この本の冒頭で著者は、「田舎でのんびり暮らす、定年退職後はスローライフ──そんなまやかしのスローガンに踊らされてはいけない」と語りかけます。美しい自然の中で穏やかに暮らすという幻想の裏にある、“過酷な現実” と “覚悟の必要性” を、読者に突き付ける姿勢が鮮烈です。

 

本書は以下の8部構成から成り立っています。

1.移住前の段階

2.ログハウス

3.薪ストーブの話

4.狩猟問題

5.電気柵問題

6.水問題

7.他にも問題が山積み

8.移住者と地元民

 

本書の前半では、1~3部において、田舎暮らしの計画段階から、家づくりや住環境に至るまで理想と現実のギャップを鋭く指摘しています。主なポイントは以下の通りです。

◆ 「土地は安い」は幻想。現地視察や登記問題など想定外の障壁が多い

◆ ログハウス建築の憧れの裏にある高コストとメンテナンス地獄

◆ 薪ストーブは“暖かさ”以上に“労力”と“知識”を求められる存在

 

本書の中盤では、4~6部において、自然との共生における実際の問題──狩猟被害、電気柵、水源トラブルなどに光を当てます。主なポイントは次の通りです。

◆ 猪や鹿など獣害との果てしない闘いが、日常の一部になる

◆ 電気柵や防護設備の設置・管理は高額かつ継続的な労働

◆ 地下水の枯渇や井戸の故障により“命の水”すら不安定に

 

本書の後半では、7~8部において、想像を超えるトラブルと、地元住民との複雑な関係性について描かれています。主なポイントは以下の通りです。

◆ 田舎特有の“お節介”や“監視の目”に苦しむ移住者

◆ 除雪や草刈り、火の管理など、年中続く雑務が心身を削る

◆ 美しい自然は“慣れ”とともに風景になり、感動は薄れていく

 

この本の締めくくりとして著者は、「自然と共に暮らすとは、自然に支配されること」と語りかけ、甘い幻想を手放した “覚悟ある田舎暮らし” の重要性を読者に突きつけています。

都会に疲れ、田舎に “癒し” を求めている人ほど、本書は心に刺さることでしょう。「いつかは田舎で暮らしたい」と考えている人が読むべき、現実直視の書です。

 

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では、今日もハッピーな1日を!【3794日目】