「アメリカと日本の国力の差は、縮まるどころか広がる一方だ。いまや一人当たりGDPでは2倍以上の差が開き、専門家の報酬はアメリカのほうが7・5倍高いことも。国民の能力に差はないのに、国の豊かさとなると、なぜ雲泥の差が生じるのか? 」と問いかけている本があります。
本日紹介するのは、東京大学工学部卒業、大蔵省入省、イェール大学ph.D.取得、一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを歴任、現在は一橋大学名誉教授の野口悠紀雄さんが書いた、こちらの書籍です。
野口悠紀雄『アメリカはなぜ日本より豊かなのか?』(幻冬舎新書)
この本は、国民の能力に差がないのに、国の豊かさになると、これほどの違いが生じてしまう原因について、国の政治や企業などの仕組みにあること、すなわち自然条件ではなく、社会の仕組みの違いこそが重要だと解説している書です。
本書は以下の7部構成から成っています。
1.日米給与のあまりの格差
2.先端分野はアメリカが独占、日本の産業は古いまま
3.円安に安住して衰退した日本
4.春闘では解決できない。金融正常化が必要
5.アメリカの強さの源泉は「異質」の容認
6.強権化を進める中国
7.トランプはアメリカの強さを捨て去ろうとする
この本の冒頭で著者は、「アメリカが覇権国である理由は、アメリカが豊かな国である理由と同じだ。それは、異質なものを認める『寛容』である。」と述べています。
本書の前半では、「日米給与のあまりの格差」および「先端分野はアメリカが独占、日本の産業は古いまま」ついて以下のポイントを説明しています。
◆ アメリカは日本の2倍豊かだが、専門家の給与策差は7.5倍
◆ アメリカはコロナ禍からの回復でインフレを金融引き締めで克服、日本は金融緩和の継続で実質賃金が低下
◆ アメリカはAIを利用した経済活動が拡大、日本は産業構造が古いまま
◆ 世界的な半導体ブームはAIの発展が引き起こす変化で日本は取り残されている
◆ 日本のデジタル赤字は5兆円を超え、原油輸入額の半分にのぼる
この本の中盤では、「円安に安住して衰退した日本」および「春闘では解決できない。金融正常化が必要」について解説しています。主なポイントは次の通りです。
◆ アメリカが金利を引き上げる中で、日本は金融緩和を継続したため急速な円安が進んだ
◆ 円安で売上高が増加し企業の利益は増加したが、円安が日本経済に与える弊害が大きい
◆ 日本では生産性が低下しているので賃金上昇が物価に転嫁されスタグフレーションに
◆ 生産性向上による賃金上昇を実現するには金融政策の正常化が必要
本書の後半では、「アメリカの強さの源泉は異質の容認」「強権化を進める中国」および「トランプはアメリカの強さを捨て去ろうとする」ついて説明しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ アメリカは移民を受け入れ活躍の場を与えたことで技術開発、経済発展につながった
◆ 半導体企業エヌビディアは、設立者がアメリカ生まれではなく、工場を持たないファブレス企業
◆ 覇権国の条件は「寛容」で、アメリカは移民、人種、男女平等で変革
◆ 中国不動産バブルの崩壊、人口減少・少子化、強権的な習政権で厳しい状況
◆ 不法移民の急増が大統領選の争点、トランプ政権なら「寛容」を捨てるかも知れない
この本の締めくくりとして著者は、アメリカと日本の豊かさの違いは、国民の能力の差や自然条件の違いではなく、国の政治や企業などの仕組みの違いであり、「仕組みのどこがどのように違うのか」に対する答えが本書であると再度、説明しています。
あなたもこの本を読んで、アメリカと日本の豊かさの違いの本質を学び、日本の産業政策や金融政策、そして社会保障政策などについて、考えてみませんか?
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では、今日もハッピーな1日を!【3496日目】