「誰もが『わたし』という物語を生きている。だがここにはいくつかの制約があり、どんな物語でも好き勝手に創造できるわけではない。」と述べている本があります。
本日紹介するのは、1959年生まれ、2002年国際金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビューし、数々の著書でベストセラーを連発している作家の橘玲さんが書いた、こちらの書籍です。
橘玲『バカと無知』(新潮新書)
この本は、「やっかい」な存在である私たちの本性に迫り、”きれいごと社会” の残酷な真実を炙り出している書です。
本書は以下の5部構成から成っています。
1.正義は最大の娯楽である
2.バカと無知
3.やっかいな自尊心
4.「差別と偏見」の迷宮
5.すべての記憶は「偽物」である
この本の冒頭で著者は、安倍元首相を選挙演説中に銃撃し、死亡させた41歳の男について、ひとつだけ確実なこととして、「男に、自分が『被害者/善』であり、統一教会と、それを象徴する(と思っていた)元首相が『加害者/悪』だという絶対的な確信があったこと」を挙げています。
本書の前半では、「正義は最大の娯楽である」について、以下のポイントを説明しています。
◆ 脳の仕組みは、被害を極端に過大評価し、加害を過小評価する
◆ 自分より優れた者は「損失」、劣った者は「報酬」
◆ 世の中に不公正はたくさんあるが「世界は公正であるべき」と考える
◆ キャンセルカルチャーは「気持ちいい」から広まる
◆ 不公正なことを行った相手に制裁を加えることは脳の報酬系を刺激する
この本の中盤では、「バカと無知」および「やっかいな自尊心」について考察しています。主なポイントは次の通り。
◆ バカは自分がバカであることに気づいていない
◆ ワンマン企業が成功するのは、独裁者が「バカに引きずられる効果」を避けられるから
◆ 日本人の3人に1人は日本語が読めない
◆ 脳のエンハンスメント(増強)で賢くなれる
◆「上級国民」皇族に対するキャンセル
◆ セレブリティの不品行を「正義」の名の下にパッシングしてキャンセル
◆ 人は絶対的な利益より相対的な損得を重視
◆ 日本人の自尊心(自己肯定感)は国際的に見て極めて低い
◆ 自尊心は「勘違い力」
本書の後半では、「差別と偏見の迷宮」および「すべての記憶は偽物である」について解説しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 善意の名を借りたマウンティング
◆ 誰もが偏見を持っている、偏見の中には正しいものもある
◆ 強く願うと夢はかなわなくなる
◆ ベンツに乗ると一時停止しなくなる
◆ 道徳の「貯金」ができると、差別的になる
◆「偏見をもつな」という教育が偏見を強める
◆ トラウマ治療が生み出した冤罪の山
◆ トラウマとPTSDのやっかいな関係
この本の締めくくりとして著者は、「誰に陰謀を仕掛けられるかわからない社会では、脳は陰謀に適応するように進化したにちがいない。このようにしてヒトは、あらゆることを陰謀論で解釈するようになった。」と述べています。
あなたも本書を読んで、「正義のウラにに潜む快感、善意の名をを借りたマウンティング、差別、偏見、記憶・・・など、人間というものすごいやっかいな存在」ということを理解し、自らの言動に多少の注意を払ってみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【3032日目】