「この本の一つの特色には、『寓話』があります。寓話を使おうと思った背景には、この書籍の中のメッセージの一つである『三人称から一人称へ』というニュアンスを伝えるところにあります。」と述べている本があります。
本日紹介するのは、慶應義塾大学法学部政治学科を卒業後、住友商事入社、人材育成に関わり、その後、グロービスに入社して法人向けコンサルティング業務を経て、グロービス経営大学院オンラインMBAの立ち上げや特設キャンパスのマネジメントに携わってグロービス経営大学院副研究科長を歴任して、現在は株式会社学びデザイン代表取締役社長の荒木博行さんが書いた、こちらの書籍です。
荒木博行『藁を手に旅に出よう “伝説の人事部長”による「働き方」の教室』(文藝春秋)
この本は、「伝説の人事部長」による、よくわからないままに働き始めた20代、30代の会社員のために書いた「働き方」の教室とも言うべき書です。
本書は以下の12部構成から成っています。
1.亀が戦略的にいさぎに勝つ日
2.裸の王様が生み出す空気に勝てるか?
3.オオカミ少年に罪はない
4.桃太郎に大義はあるのか?
5.北風は相手への憑依が足りない
6.藁を手に旅に出よう
7.浦島太郎はなぜ竜宮城に行ったのか?
8.アリがキリギリスに嫉妬する理由
9.花咲か爺さんの人生の尺度
10.大きな蕪を分解する方法
11.ティファニーちゃんが問いかけるあなたにしか見えない未来
12.君はレンガの先に何を見るのか?
この本の冒頭で著者は、主人公・サカモトの人物像を「勉強もそこそこ、愛想も人並み、コミュニケーション力にも自信なし」と描き、こんな特徴のない自分が社会人となり、人の役に立つことができるのだろうか、人の足を引っ張ることがなく、ちゃんと仕事ができるのだろうか、という怯えに近い感情を胸に、4月1日からスタートする新人研修という場面設定を紹介しています。
本書の前半では、「亀が戦略的にいさぎに勝つ日」「裸の王様が生み出す空気に勝てるか?」「オオカミ少年に罪はない」および「桃太郎に大義はあるのか?」というテーマで、石川人事部長の研修での教えを紹介しています。主なポイントは以下の通り。
◆ 自分の得意なフィールドを戦略的に考えるべき
◆ 戦略的 = 「時間軸の長さ」✕「論点の多さ」
◆ 努力には、①フィールドを選ぶ努力と②フィールドで頑張る努力の2種類がある
◆ 私たちはつねに「空気的な判断基準」と「論理的な判断基準」の間にいる
◆「空気」に負けないために、「論理」を鍛えなければならない
◆ 難しい意思決定ほど、その場の空気から逃れて客観的になれる場所で行う
◆ 可能性よりも、起きた時のインパクトを正確に見積もること
◆ モチベーションには「衛生要因」と「動機づけ要因」があるというハーズバーグ理論
◆ 敵という存在を前提とした「分断の大義」はエンドレスな分断を招く
◆ 真の大義は、「どういう世界を実現したいのか」という「世界観」がベース
この本の中盤では、「北風は相手への憑依が足りない」「藁を手に旅に出よう」「浦島太郎はなぜ竜宮城に行ったのか?」および「アリがキリギリスに嫉妬する理由」というテーマにて次のポイントを解説しています。
◆ プレゼンは「目的」と「相手」の間にあるギャップを埋めるための「手段」
◆「手段」は目に見えやすく具体的なので、固執して自己満足になりやすい
◆ マーケティングの本質は相手の「需要」を考え、作り出すこと
◆ 相手の「需要」や「目的」は抽象的だから思いつきにくく、考える必要がある
◆ マイクロスキルを組み合わせれば「強み」になる
◆ 付加価値があるかどうかを決めるのは「相手」、自分で勝手に決めない
◆ 需要があるところへ行けば、価値は高まる
◆ 自分の人生は自分で決める覚悟を持つ、人生の主導権を放さない
◆ 断片的で短期的な思考から正論を言うことを「野党思考」と呼ぶ
◆ 普段から「自分が責任者だったらどうするか」という「与党思考」で考える
◆ アドラーは「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と言う
◆ 課題を分離せよ(上司の課題を自分に取り込まない)
◆ 自分が何をやりたいか、やるべきかと「一人称」で言語化する
◆ 三人称(上司)の意見は、必要だったら一人称の中に取捨選択して取り込んでいく
◆ 人生の主導権は自分が取る
本書の後半では、「花咲か爺さんの人生の尺度」「大きな蕪を分解する方法」「ティファニーちゃんが問いかけるあなたにしか見えない未来」および「君はレンガの先に何を見るのか?」というテーマで、キャリアについて説明しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 尺度が単一で上位に行った者が偉い、という価値基準を「偏差値教」と呼ぶ
◆ 自分の人生を測る尺度は何かを自分で考える
◆ 他人が決めた尺度で、多少の差に一喜一憂する必要はない
◆ 成長 =「経験の数」✕「ストック率」
◆ 一つの経験が成長につながるように「ストック」にできる人材に、フローは消えて残らない
◆ 出すべき成果を見定めて、そのための勝負ポイントを3~5つに分解して考える
◆ いきなり具体的な打ち手にいくと、大抵抜け漏れが出る、抽象的なレベルで分解を
◆「頭」(できると信じる)と「心」(どうしてもやりたい)を一致させる
◆ リーダーとは肩書きではなく、「自分だけにしか見えていない未来」に向けて歩く人
◆ リーダーは本質的、長期的で答えの出にくい「哲学的な問い」に向き合う
◆ キャリアは竹と同じで「節目」があるから、強くてしなやか。
◆ すぐに答えを出すべきでない深くて複雑な問題を抱え続ける「ネガティブ・ケイパビリティ」
◆ 自分の人生の意味・目的のピラミッドを作ってみる
◆ ランダムな点を繋げて「何の専門性で生きていくか」を定める
◆ できるだけ多くの経験をして、ストックの点(星)とし、自分の星座を作る
この本で伝えている経験によるマイクロスキルを組み合わせて「自分だけの星座」を作る、自分のフィールドを戦略的に考えるというキャリアの思考法は、新刊拙著『定年ひとり起業マネー編』(自由国民社)および前著『定年ひとり起業』(自由国民社)にて私が提唱している「定年ひとり起業5原則」、「トリプルキャリアによる生涯現役のライフスタイル」や「3つの専門性を組み合わせてオンリーワンの希少性を獲得する」という考え方と共通する部分が多く、心から共感しました。
あなたも本書を読んで、自分の人生やキャリアを戦略的に考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【2824日目】