「転身するのに特別な技術は要らない。でも、ちょっとしたコツはありそうだ。さまざまな人たちの実例を知り、それを自分に重ね合わせてヒントを得ることで、自分だけの物語が見えてくるかも知れない。」と述べている本があります。
本日紹介するのは、1954年神戸市生まれ、京都大学法学部卒業、生命保険会社に入社し、人事・労務関係を中心に、経営企画、支社長等を経験、勤務と並行して、「働く意味」をテーマに取材・執筆・講演に取り組んだ後、定年退職して、2018年から4年間、神戸松蔭女子学院大学教授を務め、現在は取材・執筆活動等を行う楠木新さんが書いた、こちらの書籍です。
楠木新『転身力 「新しい自分」の見つけ方、育て方』(中公新書)
この本は、変化を求める理由、自らの道筋を変えるポイント、およびその道筋における課題にどのように対処すればよいのかを『転身力』というキーワードを使いながら考えている書です。
本書は以下の8部構成から成っています。
1.プロローグ 地震の可能性を探る
2.なぜ転身力なのか ー「新たな自分」を発見する
3.転身の3条件 ー 行動、語り、大義名分
4.プロセスが大切 ー 新旧のアイデンティティ
5.顧客を見極める ー 自分の土俵で勝負
6.師匠を探せ ー 出会わないと変われない
7.人間万事塞翁が馬 ー 挫折、不遇はチャンス
8.「好き」を極めてこそ ー 子どもの無邪気さ
この本の冒頭で著者は、「現在の自分を基本に置いて、そこから専門性を高めたり、今まで培ったスキルや経験を活かせる分野を広げながら、生涯現役を目指す形が理想だろう。」と述べています。
本書の前半では、「なぜ転身力なのか」および「転身の3条件」について以下のポイントを説明しています。
◆ 多くの会社員が働く意味に悩む状態が「こころの定年」
◆ 自分の可能性はいくつになっても追い求めていい
◆ 老いや死とどのように折り合いをつけていくかを中高年の時に検討する
◆ 転身も、最終的には魅力的な年齢の重ね方に関係していく
◆ 転身も3条件は、①実行、行動できる、②自分を語ることができる、③大義名分を持つ
◆ 自分から行動することによって適職に近づいていく
◆ 転身者の一番の特徴は行動、行動を通してフィードバックを受ける
◆ 転身できるかどうかは、学歴や経済力や組織での地位ではなく、行動を通して学ぶことができるかどうか
◆ 話の聞き手がいるから、自分を客観視できる
◆ 自分自身だけで自己分析はできない
◆ 転身のプロセスでは「行動」「語る」の前提として、主体的な姿勢(大義)も大切
◆ 主体的な姿勢で自らの次のステップをどのように描くか
この本の中盤では、「プロセスが大切」「顧客を見極める」および「師匠を探せ」について解説しています。主なポイントは次の通り。
◆ 転身には、いったん違う経験をして戻る道もある(道草の効用9
◆ 長寿社会の現在では、健康やお金と並んで、「転身力」が大切
◆「自分のおもしろいことは何か」「何をしたらイキイキできるか」
◆ 子どもの頃に熱中したことなど「生い立ち」も転身のヒントに
◆ 会社員は戦術のみに関心があり、自分が勝てるフィールドを探すのは容易でない
◆ どこに市場のニーズがあって、自分がそれに応えるにはどうするかを考える時代
◆ 個人事業主としての商売感覚(自分の力量が発揮できる場所を把握して戦略を実行)
◆ 自分だけのニッチな市場を見つけ、そこに自分の持つ資源を集中的に投入する
◆ 師匠を呼び込むポイントは、①欠乏感・不足感、②見極める直感、③一途な姿勢・気持ち
◆ 転身の話を聞くときはプロセスに注目
本書の後半では「人間万事塞翁が馬」および「好きを極めてこそ」をテーマに著者の考え方を紹介・説明しています。主なポイントは以下の通りです。
◆「一番仕事をしたのは60代」という転身者も
◆ 病気などの困難や挫折は、「転身」の原動力
◆「会社は自分にとって何なのか」「家族と過ごさなくていいのか」
◆ 表面的に見ればマイナスの出来事が、その人に新たな生き方を与えるチャンスに
◆ 好きを極める「夢追い人」
◆ 好奇心が転身を支える
◆ 移住という転身
◆ 故郷や地元を愛する、地元学を始めよう
この本の締めくくりとして著者は、「残りの持ち時間を考慮すると、全く新たなことではなく、今までにやり残したことや子どもの頃から興味があった事柄に取り組むことになりそうだ。」と述べています。
本書で提唱している「転身力」は、新刊拙著『定年ひとり起業マネー編』(自由国民社)および前著『定年ひとり起業』(自由国民社)にて私が提案しているコンセプトと共通するものが多く、共感する部分が多くあります。
とくに、大前研一著『時間とムダの科学』が説いている「人が変わる方法は3つしかない」という部分の引用・紹介は拙著と同じ。さらに「移住転身」というコンセプトは、私が実践するデュアルライフに通じるものがあります。
さらに、「転身力」という捉え方は、私が人生100年時代の生き方として提唱する「トリプルキャリアによる生涯現役」という働き方、ライフスタイルと同じコンセプトです。(拙著『定年後不安 人生100年時代の生き方』(角川新書)を参照)
あなたも本書を読んで、「新しい自分」の見つけ方、育て方を学び、「転身力」を身につけ、人生100年時代における幸せな人生後半を送ってみませんか。
ビジネス書の紹介・活用法を配信しているYouTubeチャンネル『大杉潤のyoutubeビジネススクール』の「紹介動画」はこちらです。ぜひ、チャンネル登録をしてみてください。
では、今日もハッピーな1日を!【2813日目】