書評ブログ

『知らないと損する 年金の真実』

「年金制度はとても大切なものです。人生の終盤における生活基盤を確保するためには欠かすことのできないものです。」と述べて、「間違った知識や思い込みではなく、正しい知識を持ち、それを活用することはとても大切なことです。」と提唱している本があります。

 

 

本日紹介するのは、大手証券会社で25年にわたって個人の資産運用業務に従事、2001年に確定拠出年金法が施行される前から確定拠出年金ビジネスに携わってきた業界の草分け的存在で、2012年独立後は、「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるように支援する」という理念のもと、資産運用やライフプランニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行っている、経済コラムニスト、オフィス・リベルタス代表大江英樹さんが書いた、こちらの書籍です。

 

 

大江英樹『知らないと損する 年金の真実- 2022年「新年金制度」対応 -』(ワニブックスPLUS新書)

 

 

この本は、誰も教えてくれない年金の本質や勘違いしていることについて、わかりやすく説明している書です。

 

 

本書は以下の7部構成から成っています。

 

1.年金の本質

2.年金に対する誤解を解く-初級編-

3.年金に対する誤解を解く-中・上級編-

4.知っておくべき年金の歴史

5.年金改革で変わること

6.公的年金をうまく活用する

7.これからの年金との向き合い方

 

 

この本の冒頭で著者は、「なぜ年金が不安なのか?」について、次の3つの理由を挙げています。

 

◆ 経験していないことだから

◆ 年金不安を煽る人たちがいるから

◆ 年金について間違って理解しているから

 

 

本書では、そうした背景を踏まえて、年金についての正しい理解「年金の本質」についてわかりやすく説明しています。

 

 

続いて「年金の本質」として、以下の3点を提示して説明しています。

 

1.年金は「貯蓄」ではなく「保険」

2.年金は自助でも公助でもなく「共助」

3.年金は将来のモノやサービスに対する請求権

 

 

この本の前半では、「年金に対する誤解を解く」と題して、初級編、中上級編に分けて解説しています。主なポイントは次の通りです。

 

◆ 年金財政は赤字ではなく、積立金残高が190兆円あり、外国より多くさらに増えている

◆ 若者は年金保険料の払い損ではなく、払わなければ税負担ばかりになり年金受給ができなくなる

◆ 年金無駄遣いによる破綻は起きない

◆ GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による年金運用は黒字の年も多い

◆ 未納者が多いから年金が破綻することはない(労働者の9割は会社員で納付)

 

◆ 少子高齢化による肩車型は正確ではなく、働いている人と働いていない年金受給者の比率でみるべき

◆ 年金は賦課方式が世界標準で、積立式の先進国はない

◆ 公的年金のバランスシートは企業年金とは違って年金債務の概念が異なる

◆ 年金積立金の運用利回りは物価・賃金上昇をカバーするという目標が本来の趣旨

 

 

本書の中盤では、「知っておくべき年金の歴史」「年金改革で変わること」について、以下のポイントを説明しています。

 

◆ 2004年の年金改正が大きなターニングポイント

◆「百年安心」とは誰も言っておらず、「財政検証」による5年毎のチェックが本質

◆ 給付金を押さえる「マクロ経済スライド」で年金制度は持続可能に

◆ 年金には大切な「所得再分配機能」が組み込まれている

 

◆ 厚生年金に入れる人が増える(従業員規模基準の見直しで45万~65万人増加)

◆ 働いても年金が減らない(在職定時改定と低在老の47万円への引き上げ)

◆ 年金の受け取り方の選択肢が増える(繰り下げ受給は75歳まで可能に)

 

 

この本の後半では、「公的年金をうまく活用する」こと、および「これからの年金との向き合い方」について、著者の見解を以下の通り提示しています。

 

◆ 年金繰り下げには、➀加給年金が受け取れない、②税金や社会保険料控除も増える、③遺族厚生年金は増えない、の3点に注意

◆ 年金繰り上げでは、➀減額された支給額が生涯続く、②障害年金が受給できなくなる、③国民年金の任意加入ができなくなる、④老齢基礎年金と遺族年金のどちらかを選択となる

◆ 公的年金を増やす方法は、➀収入を上げる、②夫婦ともに厚生年金に入って働く、③長く働く、の3つ

◆ 老後のお金は「三重の塔」で、➀公的年金、➁退職金・企業年金、③貯蓄・投資

◆ 公的年金で大切なのは、➀より多くの人が制度に参加する、②公平である、③経済が成長する、の3つ

 

 

本書の締めくくりとして著者は、「買ってはいけない金融商品」として、個人年金保険および毎月分配型投資信託を挙げています。自分で備えるなら税制優遇もある「i Deco」を推奨しています。

 

 

また年金に関する優れた参考文献として次の4冊を挙げています。私もすべて読んでいますが、どれもお薦めの良書です。

 

 

 

この本は、メディアの報道や金融機関によるセールスなどの影響で、私たちが思い込んでいる年金のイメージを払拭し、「年金の本質」や正しい知識を得るのに最適な本で、分かりやすい説明がなされていてお薦めです。

 

 

また、年金については、人生設計における「年金戦略」として拙著『定年ひとり起業』(自由国民社)にも詳しく掲載していますので、併せてお読みいただければ理解が深まります。年金支給開始時期の変更に関しては、大江さんの本とは違う見方も提示していますので、ぜひ比較しながら自らの考え方を整理していただければと思います。

 

 

 

あなたも本書を読んで、日本人の9割が勘違いしていると言われる「年金の真実」を知り、老後資金をしっかりと作っていきませんか。

 

 

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では、今日もハッピーな1日を!【2616日目】