書評ブログ

『新型コロナ VS 中国14億人』

「『コロナを世界にばらまいた元凶』として批判を浴びる中国だが、14億人もの中国人がどのようにこの未知なるウイルスと対峙したか、その実態は日本ではほとんど知られていない。」と指摘している本があります。

 

 

本日紹介するのは、1974年生まれ、早稲田大学政治経済学部卒、西日本新聞社記者となり、2010年に中国・大連の東北財経大学に国費博士留学(企業管理学)少数民族向けの大連民族大学での講師を経て、現在は経済ジャーナリスト浦上早苗さんが書いた、こちらの書籍です。

 

 

浦上早苗『新型コロナ VS 中国14億人』(小学館新書)

 

 

この本は、当初の情報隠蔽はあったものの、その後は新型コロナ感染症拡大という非常事態に短期間で適応し、ウイルスを制してきた事実と、中国式と呼ばれる武漢封鎖(ロックダウン)5G、AI,ビッグデータの活用について紹介している書です。

 

 

 

本書は以下の8部構成から成っています。

 

 

1.「コロナ後の世界」に向かう中国人

 

2.5G、AI,ビッグデータでコロナを迎撃

 

3.ウイルスをばらまいたら死刑

 

4.リーダーは政治家よりも医師と企業

 

 

 

5.グローバル化する「マスク作戦」

 

6.中国から流入した日本のデマ

 

7.コロナとの戦いは続く

 

8.早く抜け出した国が新しい世界をつくる

 

 

 

この本の冒頭で著者は、当初の情報隠蔽で崖っぷちに立たされた中国が頼ったのは、17年前のSARSとの戦いで活躍した老戦士たちで、感染症の専門家浙江省衛生当局のトップを長年務めた李蘭娼(リーランジュン・72歳)の申請で、広州市に拠点を置く専門家・鐘南山氏(83歳)をトップとする6人のハイレベル専門家グループが組織されました、と紹介しています。

 

 

 

専門家グループ6人は武漢に入り、戻った1/20には孫春蘭副首相らに面会を求めて、武漢封鎖について働きかけた、と認めているそうです。

 

 

 

しかも「春節(1/23~)まで待ってはいけない」と強く進言し、1/23午前10時~武漢の交通が遮断され、人口1,300万人都市が封鎖されたということです。

 

 

 

鐘南山氏が取ったやり方は以下の2つによるウイルスの封じ込めに尽きる、としています。

 

 

◆ 感染源の徹底的な追跡

 

◆ 人の移動を止めること

 

 

 

さらに鐘南山氏は、「新型コロナでも、コウモリやセンザンコウがウイルスを媒介した可能性が高い。禁止しても徹底されないが、人の命を守るために、古い因習でしかない野生動物を食べる慣習は改めるべきだ」と訴えています。

 

 

 

同氏は「感染症を抑え込む」という目的のためには、国民以外の存在とできるだけ対立を回避して、味方に引き入れる手練れの策士であるように見える、と著者は言います。それは鐘南山氏の以下の言葉にあらわれています。

 

 

「自分の言葉を皆さんがそのまま報道してくれる、だから私はメディアをとても信頼している」

 

「17年前、中国は確かにSARSを隠蔽してたが、今回の新型コロナに関して、中央政府は何も隠していない。私たちの進言を翌日には全国的に実行してくれた」

 

 

 

その他、本書では新型コロナウイルス感染症患者の受け入れの中心となった武漢市の病院や、10日弱の超突貫工事で建設された専門病院「火神山病院」「雷神山病院」の計2600床、医師・看護士の支援部隊の活躍が紹介されています。

 

 

 

とくに病院での遠隔診療やAIによるCT画像診断など中国ハイテク企業(ファーウェアイ、チャイナテレコム、アリババグループ)の貢献や、モバイル決済、出前アプリなど非接触型サービスが力を発揮したことが解説されています。

 

 

 

本書の後半では、マスクをめぐる攻防や、中国から日本に伝わったデマ情報の拡散世界から見た時の日本の社畜感覚の異様性が語られています。

 

 

 

マスクについては、中国では大手EC企業の全面的な協力により、マスクの高値転売が厳しく規制され、日本でのモラルの低さが恥ずかしくなる現実が明らかになっています。

 

 

 

中国の大手IT企業と比較して、日本の大手IT企業の技術力の低さ、行動力のなさ、国家の緊急事態への協力・貢献といった意識やモラルの低さが浮き彫りになり、本当に情けない現実を知ることとなりました。

 

 

 

この本では、著者の浦上さんの中国人や中国に駐在する日本人への取材力、人的ネットワークが素晴らしく、新型コロナウイルス感染症を扱った類書の中で、圧倒的なリアリティやディテールの描写が際立っていて、深く感銘を受けました。

 

 

 

新型コロナウイルス感染症の対策について、中国での戦いをここまで詳細にレポートした書籍は他になく、ぜひ一読をお薦めします。

 

 

 

あなたも本書を読んで、新型コロナと中国14億人との戦いの真実を学び、日本での対策に活かしてみませんか。

 

 

 

2020年12月4日に、YouTubeチャンネル『大杉潤のyoutubeビジネススクール』【第174回】ジャーナリストが明らかにした「新型コロナ VS 中国14億人」にて紹介しています。

 

 

 

 

 

毎日1冊、ビジネス書の紹介・活用法を配信しているYouTubeチャンネル『大杉潤のyoutubeビジネススクール』の「紹介動画」はこちらです。ぜひ、チャンネル登録をしてみてください。

 

 

 

 

では、今日もハッピーな1日を!【2420日目】