書評ブログ

林總 『団達也の不正調査ファイル』 (日経ビジネス人文庫)

林氏は公認会計士、税理士として外資系会計事務所・監査法人の勤務を経て、現在は独立して経営コンサルティングを行っている。

 

本書は、MBAを取得した経理課長・団達也を主人公にして、中堅電子部品メーカーの不正経理を明らかにしていくというストーリーを通して、企業の会計、経営管理を学べるようになっている。

 

ストーリーがなかなかリアルで、フィクションではあるが、実在のモデルをもとに組み立てたものと思われるので、思わず展開に引き込まれてしまう。どこのメーカーでもありそうな事例が満載だ。

 

粉飾決算の原因となる架空売上の計上、不正取引、在庫評価のごまかしなど、よく使われる不正の手口を読んでいくと、うちの会社でも似たようなことが行われているのでは、と思わず考えさせられる。

 

TVドラマで大ヒットした 「半沢直樹」 のように、企業内のドロドロした人間模様が細かく描かれていて、面白い。主人公の団達也はメーカー版 「半沢直樹」 といった感じで、不正を暴いて正していく姿勢に共感を覚える。

 

本書は会計、経理の基本が学べる、わかりやすい啓蒙書だ。ファイナンスはとっつきにくいと感じて苦手意識のあるビジネスパーソンにはぴったりの入門書になるだろう。中級者にも読み応えのある良書として推薦したい。