大正6年生まれ、101歳の俳壇の重鎮が100歳を超えて出版した俳句集があります。
本日紹介するのは、関西で70年の伝統がある俳誌『諷詠』の名誉主宰をつとめ、俳人協会顧問などを歴任した後藤比奈夫さんが書いた、こちらの句集です。
後藤比奈夫『あんこーる 後藤比奈夫 句集』(ふらんす堂)
この本は、著者の後藤さんが99歳の白寿の時に出した第十四句集『白寿』が思い掛けない人気となり、「最後の句集になる」と、その「あとがき」に記したにもかかわらず、音楽のアンコールなら許されるだろうと、決意して出版したものです。
本書は以下の3部構成から成っています。
1.月光 平成二十七年
2.養老 平成二十八年
3.新玉 平成二十九年
上記の3年間に分けて、計351句が掲載されていますが、100歳を迎えるまでの直前に著者が、どんな心境で句を詠んだのかがリアルに感じられる句集になっています。
私がとくに心動かされた句を以下に紹介します。
◆ 月光に濡れて今宵の車椅子
◆ 日本よりよき国ありと去ぬ燕
◆ 月城にいつまで残る夕茜
◆ 上寿はや目前にあり新暦
◆ ベランダに雀遊べる初景色
◆ 角田川七福遊び宝舟
◆ 稲積みて上寿を無事に迎へし身
◆ 物を言ふ人形囲み初笑
◆ 淋しさの正体判り十三夜
◆ 何の香となけれど秋が薫るとて
◆ 去年白寿今年上寿の花の下
◆ もて余すほどでなけれど日の永し
◆ 露けしや淋しや何故に急ぐ
◆ 八月の来し広島よ長崎よ
◆ 夏果つる働きもせず汗もかかず
◆ 林立のビルの中ゆくヨットの帆
◆ 大台に乗せたる歳にお年玉
◆ 受けてみよ上寿の老の打つ豆ぞ
◆ この度は老木に花の咲きにけり
◆ このさくら人のこころの中へ散る
◆ この花と齢比べし日もありし
◆ 花眩しセンテナリアンなどと言はれ
◆ 亀鳴いたさうな百寿の誕生日
◆ 百歳をクリアーしたる朝寝かな
◆ あたたかや句集白寿にアンコール
百歳になった者にした詠めない句が多くあり、誰もが初めて経験する年齢に到達した時の心境が伝わってきて、深く感銘を受けます。
句集『白寿』の後に出す『あんこーる』という本書のタイトルを読んだ、最後の句はユーモアもあって、温かい気持ちになります。
あなたも本句集を読んで、百寿者(センテナリアン)の思いを感じてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を