2006年の初め、まだ「ビッグデータ」という言葉がなかった時期から、リストバンド型のウエラブルセンサを使って、社会現象や人間行動を計測して、大量データを分析することで、人間行動や社会現象に関する様々な発見により世界をリードしてきた研究の全体像を記した本があります。
本日紹介するのは、日立製作所中央研究所・主管研究長の矢野和男さんが書いた、こちらの書籍です。
矢野和男『データの見えざる手 ウエラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』(草思社)
この本は、人間や社会に関する大量の計測データは、我々の人生における根源的な問い、すなわち「どうすればハピネスは高められるのか」、「どうすれば幸運にめぐり会えるのか」という問いに答えてくれる可能性がある、と述べている書です。
本書は以下の6部構成から成っています。
1.時間は自由に使えるか
2.ハピネスを測る
3.「人間行動の方程式」を求めて
4.運とまじめに向き合う
5.経済を動かす新しい「見えざる手」
6.社会と人生の科学がもたらすもの
この本の冒頭で著者は、「時間の使い方は意思により自由になるか」という問いを投げかけています。
この「時間の使い方」については、スイスの哲学者カール・ヒルティの『幸福論』でも、スティーヴン・コヴィーの『七つの習慣』でも、経営学の泰斗ピーター・ドラッカーの『経営者の条件』でも、中心テーマとしてその重要性を扱っています。
しなしながら、本書で述べる研究の結論では、万物を支配するエネルギー保存則は人間にも効くもので、「時間の使い方」は法則により制限される、ということです。
例えば、原稿執筆やプレゼンテーションで使った動きが多くある日は、そこで使われない帯域の有効利用が「時間の使い方」には重要課題である、といったことになります。
つまり、帯域ごとの活動予算を知ってすべての帯域を使い切るのが、仕事ができる人になります。
大切なのは、「エントロピー」という「自由さ」を表わす概念です。一般には「デタラメ」とか「乱雑さ」と解釈されるこの言葉は、実は人の活動の「束縛されていない度合い」や「自由さ」を示すものだそうです。
自由さがあれば、人間の活動は熱量の高い状態で続けることができるのです。
次に本書では、「幸せを測り、制御することはできるのか」という問いを投げかけています。
この分野の研究は、ここ10年で急速に進み、幸せの心理学である「ポジティブ心理学」として知られています。
幸せになりやすい人は半分は遺伝で決まっているが、残り半分は後天的な影響だそうです。
この後天的な影響のうち、環境要因(お金・健康・人間関係など)は意外と少なく、幸せ全体の10%程度だそうです。
幸せ(=ハピネス研究)の第一人者である米カリフォルニア大学のソニア・リュボミスキー教授の研究および著書『ハピネスの方法』によれば、残り40%を占める「日々の行動の習慣や行動の選択」により、幸せが決まる、ということです。
つまり、ちょっとした行動でハピネスを高めることができるのです。とくに、「自分から積極的に行動を起こしたかどうか」が重要だそうです。
自ら意図を持って何かを行うことで、人は幸福感を得るのです。
さらに、社員のハピネスを高めると会社は儲かることが分かってきていて、『ハーバードビジネスレビュー』の2012年2月号は「社員の幸せで会社が儲かる」という特集を組んでいます。
幸福な人は、次のように、あらゆるパフォーマンスが高くなります。
◆ 仕事の生産性が37%高い
◆ クリテイティビティは300%高い
◆ 結婚の成功率が高い
◆ 収入レベルが高い
◆ 友達に恵まれる
◆ 健康で寿命が長い
そして、この幸せ度はウエラブルセンサで測定できる、と著者は言います。休憩中の会話や身体運動とも幸せ度や生産性は密接な関係があり、活気ある職場にすることが経営の重要項目になる、ということです。
本書の後半では、人間行動の方程式や、「運こそ実力そのもの」であることが説明されています。
詳細についてはぜひ、この本を手にとってお読みください。
また、社会を科学すること、ビッグデータやAIについても著者の考え方や研究の方向性が記されています。
著者はこの本で、人や社会の定量的なデータを大量に収集・活用することで、科学技術が社会や人生をも対象とした研究に道を開いたことを解説しています。
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では、今日もハッピーな1日を