還暦を迎える建築家で作家の男性が趣味で料理をつくり、パートナーでありガールフレンドが、その絵と俳句を描いて交互に配置した本があります。
本日紹介するのは、建築家で作家の宮脇檀さんと、テキスタイル・デザイナーの根津りえさんが書いた、こちらの書籍です。
宮脇檀・根津りえ『最後の昼餐』
この本は、1995年春から1996年冬までの2年間の休日に、還暦60歳の男性が料理を作って、ガールフレンドとテラスで食卓を囲んで楽しんだ記録と、ストレス解消のヒントを提供している書です。
著者は住宅設計の分野では著名な建築家で、作家でもあり、60歳を迎えるまでは休日も仕事に明け暮れる日々を過ごしてきたそうです。
それが、還暦を迎えるのを機に、土日を休日として、料理という趣味でストレスを解消し、身体が要求する休みをつくろうと決めて実践したものです。
本書は以下の8部構成から成っています。
1.1995年春 朝飯前
2.1995年夏 晴耕雨読
3.1995年秋 ナイアガラ・フォール
4.1995~6年冬 祭りだ祭りだ
5.1996年春 冬の終わり
6.1996年夏 食べたものを描く
7.1996年秋 贅沢な昼食
8.1996年冬 ハレとケ
この本は、著者の好きな料理の研究や実践と、その舞台となるマンションのキッチンやガーデンテラスをつくっていく過程を読んだり見たりしているだけで、楽しい気持ちになってきます。
とくにページの交互に描かれている、料理やガーデンテラスなどのイラスト(デッサン)は魅力的で、思わずこんな場所で昼食を取ったら、さぞかし美味しいだろうと思わずにいられません。
また、海外の街へグルメの旅に出かける様子も書かれていて、それがまた料理づくりに生かされ、とても興味深く読み進めていけます。
著者の宮脇檀さんが、自らのライフスタイルを書いた本で、当時、新宿区という都会の真ん中に住んでいたために感銘を受けた本があります。
1992年なので古い本ですが、『都会(まち)に住みたい-何故日本人は郊外に住むのか』(PHP研究所)です。私の場合は偶然、社宅がそこにあった、というだけですが、都会に住む価値が分かる本です。
本書の終盤になって、「これがあなたの癌です」という、著者の「癌の告知」の場面が突然、出てきて驚かされます。それまでは一切、病気のことは書かれていません。
そして、締め括りとして、あと何回、食事ができるのだろう、それを考えると1回1回の食事を決して無駄にできない、という著者の思いが伝わってきて、胸がいっぱいになります。
実は著者の宮脇さんは、その2年後の1998年に62歳で亡くなられました。私もそのライフスタイルを手本にしたいと思っていた作家でしたので、この若さで他界されたのはほんとうに残念です。
あくまでも、快適で居心地のいい住空間にこだわり、設計者としてその思想を極めてきた建築家の著者が、人生の終盤に選んだライフスタイルが、本書には余すところなく描かれています。
あなたも本書を読んで、還暦以降のライフスタイルについて、自分の人生について、じっくりと考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を