細田高広氏は、一橋大学卒業後、博報堂にコピーライターとして入社。その後、アップルやペプシなどのブランド戦略を手がける米国のクリエイティブエージェンシー TBWA/CHIAT/CAYに所属した。
国内外で広告賞の受賞多数の実績を持っている。本書は、アップル、ソニー、スターバックス、マイクロソフト、アマゾンなど、ビジョナリーワードで未来を作ってきた企業の実例が語られている。
紹介されているビジョナリーワードの主要なものは以下の通り。
1.エンジニアではなくアーティスト / 1,000曲をポケットに (アップル)
2.自由闊達にして愉快な理想工場 / ポケットに入るラジオ (ソニー)
3.家庭でも職場でもない 「第3の場所」 (スターバックス)
4.すべての机と家庭にコンピュータを (マイクロソグト)
5.貧困を博物館に (グラミン銀行)
6.ATMのように気軽にクルマを使える (ジップカー)
7.通過する駅から集う駅へ (JR東日本)
8.世界中の全ての本が60秒以内で手に入る (アマゾン)
理想とする未来を、言葉で表すことによって実現していく、そういう力を持った言葉が「ビジョナリーワード」だ。こうした言葉が発信されることによって、理想の未来が実現してきた。
ディズニーは、全てのアルバイトを「キャスト」と呼び、職場はステージで労働は演技だ。夢の空間であるディズニーランドは、アルバイトの一人ひとりに至るまで、見事に夢の世界を演じきっているから感動を与えることができる。
言葉の力は偉大だ。ビジョナリーワードには、①解像度(イメージが鮮明に浮かぶ)、②目的地までの適度な距離(近すぎても遠すぎてもダメ)、③風景の魅力(魅力的な未来)、という三つの条件が備わっている。
言葉が未来を作ってきた事実を実感できる一冊だ。クリエイティブな仕事に取り組む全ての人々に本書を心から推薦したい。