『8050問題の深層-「限界家族」をどう救うか』

2019.10.07 (月)

「なぜ、いまになって、ひきこもりの高年齢化や8050問題が深刻になってきたのでしょうか」と問いかけ、人口構造若者の雇用環境の変化など複数の要因が重なり合い、深刻な問題を生み出すタイミングをいま迎えているのではないか、と仮説を述べている本があります。

 

 

本日紹介するのは、名古屋大学大学院博士後期課程単位取得修了社会学の立場から児童生徒の不登校、若者・中高年のひきこもりなど、社会的孤立の課題について調査・研究を行う愛知教育大学教育学部准教授川北稔さんが書いた、こちらの書籍です。

 

 

川北稔『8050問題の深層-「限界家族」をどう救うか』(NHK出版新書)

 

 

この本は、平成の時代「ひきこもり」「ニート」「フリーター」といった社会問題を表す新しい言葉が生まれたことに対して、国が若年者の就労支援などの対策を行ってきましたが、未解決の課題が多く、そうした問題の実態を解明し、私たちはどう向き合っていけばよいのかを提示している書です。

 

 

 

本書は以下の6部構成からなっています。

 

 

1.はじめに

 

2.終わらない子育て

 

3.ひろがる社会的孤立と8050問題

 

4.ひきこもり支援の糸口

 

5.限界家族をどう救うか

 

6.おわりに

 

 

 

この本の冒頭で著者は、「ひここもり」とは、社会に参加することがなく、家庭を中心に生活している「状態」のこと、と説明しています。

 

 

 

厚生労働省「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」(2010)では、ひきこもり「様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学、非常勤職を含む就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)を指す現象概念である。」と定義しています。

 

 

 

これまで、ひきこもりと言えば、15歳から39歳までの若年層を指して約54.1万人と推計されていましたが、2019年3月に内閣府が39歳から64歳までのひきこもり状態にある人の調査結果を発表し、全国で61.3万人という推計になりました。

 

 

つまり、わが国には100万人を超えるひきこもり人口があることになります。

 

 

 

ひきこもり状態にも3段階くらいの差があり、その状態は多様化していますが、長期間にわかるケースも多く、ひきこもり本人の高年齢化や、親と同居している場合には親の高齢化や介護、さらに親との死別による経済的問題も発生しています。

 

 

 

また、ひきこもりに至るきっかけも多岐にわたり、いじめや不登校、受験や就職活動での失敗、何十年も会社勤めをしていた人がリストラにあう、夫の転勤で知人のいない地域に移ったなど、様々なことが契機になっています。

 

 

 

次に、ひきこもりの背景について、厚生労働省によれば、以下の3つに分かれる、ということです。

 

 

◆「生物学的側面」(統合失調症、うつ病、強迫性障害、パニック障害などの精神疾患)

 

◆「心理的側面」(ストレス、緊張感、不安感、優等生の息切れ)

 

◆「社会的側面」(進学や就職といった人生の節目に想定コースから外れる)

 

 

 

さらに本書では、ひきこもりが始まったときからの事例を紹介し、「過去の子育て」を悔やむ親の苦悩を記しています。

 

 

 

続いて、ひきこもりによる社会的孤立や、50代のひきこもりと80代の親が同居して共倒れになる「8050問題」その予備軍とも言える、40代と70代の親の同居である「7040問題」を取り上げ、解説しています。

 

 

 

こうした子ども世代の苦境が大きく表れる層として、バブル崩壊の初期(1991年度~2003年度)に大卒で新卒採用になった「就職氷河期世代」と呼ばれる、現在の40代が挙げられます。

 

 

1991年度新卒の層が、そろそろ50歳に到達し始めており、これから「8050問題」は本格的に増加し、決して一過性の減少にとどまらない、と著者は危機感を述べています。

 

 

現在、40代半ばにあたる団塊ジュニア世代(1971年~1974年生まれ)は、まさにこれから「8050問題」の対象に入ってきますが、その母集団が格段に大きいため、社会問題としてクローズアップされるのは確実でしょう。

 

 

 

この本の後半では、ひきこもり支援の糸口となる事例の紹介や、支援のあり方が論じられていて参考になります。

 

 

 

また、過疎化が進み、65歳以上の人が50%を超える集落は「限界集落」と呼ばれていますが、社会に中には共倒れ寸前という「限界家族」が多く隠れていて、社会から孤立しているのではないか、と本書では指摘しています。

 

 

 

その背景にあるのは、平成の時代を通じて進んできた「家族の縮小」、とりわけ主流の世帯が「単独世帯」になったことも影響しているでしょう。

 

 

 

一方で、平成の時代「家族重視」、「家族の中では子ども重視」の意識が高まっていて、「親子関係の長期化」の傾向もみられます。

 

 

「成人し、かつ親が存命」である人「成人子ども」と定義すると、1950年に「成人子ども」は総人口の29%であったものが、2000年には約半数まで増加しています。

 

 

生まれてから親を看取るまでの「親子共存年数」は長期化していて、博報堂生活総合研究所の推計では、およそ60年に達していて、多くの大人は人生の3分の2以上を「子ども」として過ごすことになっています。

 

 

 

著者の問題提起として、従来は子どもの就職や結婚などにより、「親子の関わり方」についても区切りや一定の距離感がつかめてきたが、就職難や未婚化により、「子離れ・親離れのタイミング」が難しくなっていること、を挙げています。

 

 

 

本書の終盤では、「なぜ家族は閉ざされるのか」「子育てに専念する社会の始まり」を考察する中で、「平成の家族が直面した矛盾」を描き出しています。

 

 

 

この「8050問題」は、「団塊世代の親と団塊ジュニア世代の子ども」の組み合わせで、今後数年間~十数年間にわたり、急激に増加して大きな社会問題になることは、まず間違いないでしょう。

 

 

 

私が考える処方箋は、以下の4つの基本スキームから成る公的支援制度による社会復帰プログラム(訓練施設)の設立です。

 

 

◆ ひきこもり100万人を対象にして、一括雇用して、全寮制居住型で介護専門職員として職業指導訓練

 

◆ 指導訓練の基本は、早寝早起き(太陽光線を十分に浴びてセロトニンを作る)と運動訓練による規則正しい生活習慣の確立

 

◆ 介護技術とIT技術を習得し、AI付きロボットや他の介護職員、施設入居者とのコミュニケーション力を養成

 

◆ 訓練スタッフは、ケアマネージャーなど介護専門資格者のほか、自衛隊経験者、瞑想指導できる僧侶など宗教関係者、心理カウンセラー、精神科医師、看護士、教育関係者、コンサルタント等から成る専門家集団

 

 

 

ここに税金を10兆円単位で投入すれば、介護・医療・生活保護にかかる国費負担を劇的に減らせるのではないか、と推計しています。

 

 

 

また、タックスヘブンを使って、法人税を大幅に減額している大手IT企業などに、タックスヘイブン活用メリットの半額を「デジタル税」や「個人情報活用税」などで強制出資させる法案を議員立法で通して、ほんとうの社会貢献をしてもらったらいかがでしょうか。

 

 

 

あなたも本書を読んで、これから大きな社会問題となる「8050問題」について、真剣に考えてみませんか。

 

 

 

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では、今日もハッピーな1日を!

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