書評ブログ

『要介護にならない! 自立と寝たきりの分岐点、「フレイル」を知る』

「寝たきりになるか、自立して生きるか——その分岐点は “フレイル” にある。」
そんな日本の超高齢社会において最重要テーマを、第一線の医師・行政官として長年牽引してきた人物が明快に解説した本があります。

本日紹介するのは、1960年北海道生まれ。慶應義塾大学医学部を卒業後、厚生省(現・厚生労働省)に入省。チュレーン大学公衆衛生大学院への留学、カリフォルニア大学サンフランシスコ校での研究員を経て、「健康日本21」の策定、診療報酬・介護報酬改定、老健局・保険局・健康局で要職を歴任し、2018年には 厚生労働省健康局長 に就任。退官後は、日本食生活協会代表理事として国民の健康づくりを推進する宇都宮啓さんが書いた、こちらの書籍です。

宇都宮啓『要介護にならない! 自立と寝たきりの分岐点、「フレイル」を知る』(ワニブックスPLUS新書)

この本は、健康と寝たきりの中間にある「フレイル」を正しく理解し、“適切な生活改善で人は何歳からでも回復できる” という希望と、その具体策を示す一冊です。

本書は以下の3部構成から成っています。

1.「寝たきりになるか」「自立して生きるか」の分かれ道

2.食べる力が「フレイル」を食い止める

3.地域活動をしている人ほどイキイキ長生き

 

本書の前半では、フレイルとは何か、そして「寝たきり」と「自立」を分ける境界線がどこにあるのかが明快に示されています。フレイルは放置すると悪化しますが、正しく対処すれば回復可能である点が強調されます。主なポイントは以下の通りです。

◆ フレイルは“老化の必然”ではなく “改善可能なサイン” である

◆ 要介護に陥る最大の原因は、実は「生活習慣の小さな崩れ」

◆ 痩せ、筋力低下、気力の衰えは「危険信号」

◆ 高齢者の転倒は生活機能低下の入り口になる

◆ 家族や本人が “気づかないフレイル” こそ最も怖い

この本の中盤では、「食べる力」こそフレイル予防の核心であると述べられ、食事・栄養の改善が筋力・免疫・生活機能に直結することが解説されています。主なポイントは次の通り。

◆ 高齢者こそ “たんぱく質” が人生を左右する

◆ 噛む・飲み込む力(オーラルフレイル)が衰えると一気に老け込む

◆ 食事量が落ちると筋力と体力も急激に低下する

◆ 食べる力を支えるのは、歯科・栄養・運動のトライアングル

◆ “太るより痩せるほうが危険”という高齢期ならではの事実

本書の後半では、地域参加・社会とのつながりがフレイルの改善に大きく影響することが示されます。「身体」だけではなく、「社会性」が健康寿命を予測する最大の要因であるという重要な指摘が続きます。主なポイントは以下の通りです。

◆ 外出・交流の頻度がそのまま健康寿命に反映される

◆ 孤立はフレイルの最大の加速因子

◆ 地域活動に関わる人は落ち込みにくく、回復も早い

◆ 人と会う機会があることで、栄養・運動・生活リズムが整う

◆ “社会との接点” は薬以上の健康効果を持つ

フレイルは、誰もが避けて通れないテーマです。しかし本書を読むと、「正しい知識と生活改善で、健康寿命は自分で延ばせる」という力強いメッセージが伝わります。

人生100年時代において、“何歳になっても自立して生きるために何が必要か”
その答えがシンプルかつ実践的にまとまった良書で、お薦めです。

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では、今日もハッピーな1日を!【3932日目】