「何を買うかではなく、どう生きるか。」――この一文に、本書のすべてが凝縮されています。
本日紹介するのは、一橋大学社会学部卒業。(株)パルコ入社。マーケティング情報誌『アクロス』編集室勤務。86年同誌編集長。90年三菱総合研究所入社。99年 「カルチャースタディーズ研究所」設立。 消費社会、家族、若者、階層、都市などの研究を踏まえ、新しい時代を予測し、社会デザインを提案している、消費社会研究家・三浦展(みうら・あつし)さんが、コロナ禍以後の日本社会のゆくえを「ウェルビーイング(Well-being)」というキーワードから描き出した、こちらの書籍です。
三浦展『ウェルビーイングな日本』(而立書房)
本書は、AI化・人手不足・超高齢社会・気候変動という “4つの構造変化” を背景に、
「これからの日本はどんな幸せを追求すべきか?」を問う社会未来論です。
消費社会の延長ではなく、**「市民」「生活者」「共生者」**としての生き方をどうデザインするか。物質的な豊かさから、心の豊かさへ――。いま、日本社会が大きく価値転換を迫られていることを、著者は膨大な生活調査と都市観察から読み解きます。
本書は以下の6部構成から成っています。
1.ウェルビーイングを目指す日本とアジア
2.ウェルビーイング格差
3.デジタル化は人間を孤独にする
4.心豊かな暮らしのための個人商店
5.若者のシンプル離れ
6.ちいかわ人気を支える努力と友情と将来不安
本書の前半では、「ウェルビーイングを目指す日本とアジア」として、
“幸福をお金で測らない社会” への移行を論じています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 「ウェルビーイング」とは、単なる幸福ではなく “生きる総体の充実”
◆ 日本は「物質的な豊かさ」ではなく「時間・関係・生きがい」の質を問う時代に入った
◆ アジア諸国でも “共同体の絆” を重視する価値観が再評価されている
◆ 経済成長よりも「生涯にわたる生活の質」を問う社会設計へ
◆ 人間を「消費者」ではなく「生活者」として捉える発想の転換が必要
この本の中盤では、「デジタル化と孤独」「個人商店とつながり」をテーマに、
テクノロジー社会の光と影を掘り下げています。主なポイントは次の通りです。
◆ デジタル化の進展は、便利さと引き換えに “孤独” を拡大している
◆ SNSは “つながる道具” であると同時に、“比較と孤立” を生む装置でもある
◆ 心の健康を保つには、リアルな「対話と関係」が欠かせない
◆ “地域の個人商店” が再びコミュニティの核になる
◆ 消費の主役は「モノ」ではなく、「共感と物語」へシフトしている
本書の後半では、「若者文化とウェルビーイングの未来」を論じています。“若者のシンプル離れ” という現象を切り口に、現代世代の意識変化を鮮やかに描きます。主なポイントは以下の通りです。
◆ Z世代・α世代は「効率」より「意味」「心地よさ」を重視する
◆ “ちいかわ” 人気の背景には、「努力」「友情」「不安」という現実的な共感軸がある
◆ 若者は“がんばらない理想”を共有し、感情を支え合う新しい共同体をつくっている
◆ 消費から “共感” へ、所有から “関係” へ――価値の重心が変わっている
◆ ウェルビーイング社会の核心は、「誰かと一緒に生きる安心感」にある
本書の魅力は、社会学・経済・都市論・文化論が一体となった “未来の生活地図” にあります。著者は「ウェルビーイング」を単なる幸福論や経済指標としてではなく、“人間が人間として生きられる社会構造” として捉え直しています。
その核心にあるのは、次の一文です。「お金とは別の幸せを、私たちは想定しなければならない。」
働き方・住まい・買い物・人間関係――。すべてが変化する時代に、私たちは “生きる総体” をどのように再構築できるのか。本書はその問いに対し、生活者の現場からリアルなヒントを与えてくれます。
三浦展さんの分析は、企業や自治体のまちづくり・ライフデザインに関わる人にも必読です。「ウェルビーイング」を個人の幸福にとどめず、社会全体の構造変革として捉える――
そこに、これからの日本の希望が見えてきます。
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