「現代の日本では、社会から孤立し、福祉行政にも、民間の支援団体にもつながれていない『見えない人たち』が増えているのではないだろうか」と述べて、生活に困窮し、住まいを失った人が犯罪の加害者になってしまうケースを取り上げ、警鐘を鳴らしている本があります。
本日紹介するのは、1969年広島市生まれ、東京大学教養学部卒業、湯浅誠氏と自立生活サポートセンター・もやいを設立、住まいの貧困に取り組むネットワークを設立し、住宅政策の転換を求める活動を行い、現在は一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事、認定NPO法人ビッグイシュー基金共同代表、立教大学客員教授の稲葉剛さんが書いた、こちらの書籍です。
稲葉剛『閉ざされた扉をこじ開ける-排除と貧困に抗うソーシャルアクション』(朝日新書)
この本は、大人の貧困は自己責任であるとする考え方が強いため、生活に困窮している人々が声を上げにくい状況にあり、そうした「見えない人々」の側から社会を見ていこうという試みの書です。
本書は以下の6部構成から成っています。
1.はじめに
2.2020年東京五輪の陰で排除される人々
3.時代を越えて拡大する住まいの貧困
4.最後のセーフティネットをめぐる攻防
5.見えなくさせられた人たちとつながる
6.おわりに
この本の冒頭で著者は、「社会的排除」とは、「物質的・金銭的欠如のみならず、居住、教育、保健、社会サービス、就労などの多次元の領域において個人が排除され、社会的交流や社会参加さえも阻まれ、徐々に社会の周縁に追いやられていくこと」を指す、と紹介しています。
そして、生活に困窮して住居を喪失した人が失うのは、生活の基盤である住まいだけではなく、仕事を探そうにも、履歴書に記載することのできる住所がないことがネックになる、ということです。
求職先に住民票を提出することができなくなり、公的支援を受けようと思ってもホームレス状態にあることにより差別的な扱いを受けてしまう、と著者は言います。
続けて、「住まいの貧困」が拡がっていく事例を紹介し、住宅政策の在り方に対して問題提起をしています。主な事例は次の通り。
◆ 東京五輪の新国立競技場建設に伴う排除
◆ 都営霞ケ関アパートの取り壊し
◆ 追いやられる原発事故避難者
◆ 2019年10月12日に関東地方に上陸した台風19号の台東区避難所で路上生活者の受け入れ拒否
◆ ホームレス問題とギャンブル依存症との深い関係
◆ 貧困状態を固定化する「バーチャルスラム」や犯罪歴の「デジタル・タトゥー」
◆ 都内のネットカフェ難民は路上生活者予備軍
◆ 困難極める高齢単身者の部屋探し
◆ 外国人、LGBTへの入居差別
◆ 初期費用の高さと保証人がネックになる賃貸住宅の確保
以上の状況を重く見て、著者は住まいの差別を禁止した「フェアハウジング法」や住宅政策の転換を強く提言しています。
本書の後半では、最後のセーフティネットである生活保護制度をめぐる攻防について考察しています。ポイントは以下の通り。
◆ 就労可能な者と就労不可能な者に分類して、前者には経済給付の見返りとして就労することを求める「ワークフェア」というシステム(英サッチャー政権で導入)
◆ 就労可能の「線引き」が難しい
◆ 立川市生活保護廃止自殺事件
◆ 小田原市の「保護なめんな」ジャンパーの衝撃
◆「生活保護受給者」から「生活保護利用者」へ
◆ 不正受給より「受給漏れ」の方が深刻
◆ 生活保護基準引き下げによる「貧困スパイラル」(=著者が呼ぶ「悪魔のカラクリ」)
◆ 生活保護法から生活保障法へ
この本の最後で著者は、「見えない人たち」とつながる方法として、以下の取り組みを紹介しています。
◆『路上脱出ガイド』を作成、無償配布
◆『路上脱出・SOSガイド』へ名称変更して、ネットカフェ難民など路上生活予備軍の人たちにも配布
◆ バスカフェで、居場所がなく家に帰れない少女とつながる
◆ 新たな基金(=東京アンブレラ基金)をつくり、1泊3,000円を4泊まで支援
◆ 健康格差を生じさせる社会的要因
あなたも本書を読んで、「見えない人」にされている排除と貧困に抗うソーシャルアクションについて知り、誰にでも忍び寄る「大人の貧困」である生活保護、住宅問題について考えてみませんか。
2021年3月5日に、YouTubeチャンネル『大杉潤のyoutubeビジネススクール』【第199回】閉ざされた扉をこじ開ける「ソーシャルアクション」にて紹介しています。
毎日1冊、ビジネス書の紹介・活用法を配信しているYouTubeチャンネル『大杉潤のyoutubeビジネススクール』の「紹介動画」はこちらです。ぜひ、チャンネル登録をしてみてください。
では、今日もハッピーな1日を!【2440日目】