東京大学高齢社会総合研究機構が専門分野を横断して総力を挙げて作った高齢社会の教科書があります。本日紹介するのは、こちらの本です。
東京大学高齢社会総合研究機構『東大がつくった高齢社会の教科書』(ベネッセコーポレーション)
この本は、日本の高齢社会をめぐる諸問題を、現時点では最も包括的に解説した書籍ではないかと思います。東京大学が中心になって発足させた東京大学高齢社会総合研究機構が作成しました。
タイトルが「教科書」となっていますが、実は「高齢社会検定試験」の公式テキストになっています。検定試験は9月12日に第3回検定試験が実施予定で詳細はこちらです。(申し込みは終了)
http://www.kentei-uketsuke.com/gerontology/
ビジネス、行政、NPO、大学など、全社会構成員に必須だと、本書では呼び掛けています。本書は、①総論、②個人編、③社会編の3つに分かれていて、検定試験もこれらを組み合わせた3種類となります。
本書は大きく上記の3分類の中で、以下の20部構成から成っています。
1.超高齢未来の姿
2.超高齢未来の課題
3.超高齢未来の可能性~課題解決に向けた方向性
4.長寿時代の理想の生き方・老い方
5.高齢者の活躍の仕方(就労・社会参加・生涯学習など)
6.高齢者の住まい
7.高齢者と移動
8.高齢者の暮らしとお金
9.高齢者の暮らしを支える資源
10.老化の理解とヘルスプロモーション
11.認知・行動障害への対応
12.最期の日々を自分らしく
13.超高齢社会と社会保障
14.医療制度の現状と改革視点
15.介護・高齢者福祉の現状と改革視点
16.年金政策の現状と改革視点
17.住宅政策・まちづくり
18.交通・移動システム
19.ジェロントロジー
20.高齢者と法・自己決定と本人保護
上記の1~3が「総論」、2~12が「個人編」、13~20が「社会編」となっています。それぞれが重要なテーマであり、専門分野を横断する形で整理されています。
執筆陣は、大半が東京大学出身の教授、特任教授で、各分野における第一人者と言える方々です。この教科書では、社会に不可欠な3大スキルとして、以下の3つを提唱しています。
1.英語
2.ICT
3.高齢社会の知識
確かに今後の日本社会の解決すべき課題は、殆どが「高齢社会」という前提を抜きにしては解決が不可能でしょう。
本書の中で私がとくに関心を持ったのは、「個人編」の中の「長寿時代の理想の生き方・老い方」です。「理想的な老い方」について東大の教授が論文を執筆する社会になったのかと思うと感慨深いものがあります。
ここでは、人生90年として、人生を3つのステージに分けています。第1ステージが75歳までの活動期、第2ステージが75歳以降の自立度の衰退期、そして第3ステージが介護・療養期です。
とくに活動期の75歳までに、50歳からのチャレンジ、70歳からのチャレンジなど、「多毛作人生」を提唱しているのが興味深いところです。
私が提案している「定年前起業」という生き方は、40~50代に定年を待たずに起業する「人生二毛作」を実践するものですが、本書ではさらに70代での挑戦など、「多毛作」を推奨しています。
それだけ人生は長くなり、また変化の激しい時代になった、ということでしょう。
また、「自分らしく生きる」、「より良く生きる」という意味での「サクセスフル・エイジング」をめざすという考え方も示され、私も共感します。
寿命の延長からQOL(Quality of Life = 人生の質)を考える時代になり、離脱理論、活動理論、継続理論、SOCモデル、老年の超越、社会情緒的選択理論など、様々な考え方が提唱されています。
興味のある方はぜひ、本書のP55~P68をお読みください。個人の人生を考えていく指針が数多くの概念の解説を通して学ぶことができます。
もう一つ、私が関心を持ったのが、構成の19番目にある「ジェロンテクノロジー」です。これは、ジェロントロジー(加齢学)とテクノロジー(技術)を合わせた言葉で、高齢者のための生活自立支援技術の研究を指します。
今後、自立支援を必要とする後期高齢者の人口が急増すれば、その需要は飛躍的に高まるでしょう。QOLを上げる技術開発が大いに期待されると考えています。
あなたも本書を読んで、超高齢社会に入る日本の課題、自分自身の人生や生き方について、改めて考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!