「子どもたちにとって、食事や学習はもちろん重要だ。同時に、それら以外の場面で生じている格差についても、見過ごすことはできない。私たちは子供たちの『体験格差』をも直視し、その解消に向けた取り組みを始める必要がある。」と述べている本があります。
本日紹介するのは、1986年生まれ、兵庫県出身、小学生のときに阪神・淡路大震災を経験、学生時代にNPO法人ブレーンヒューマニティで不登校の子どもの支援や体験活動に携わり、公文教育研究会を経て、東日本大震災を契機に2011年チャンス・フォー・チルドレン設立、6000人以上の生活困窮家庭の子どもの学びを支援、現在は公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理事の今井悠介さんが書いた、こちらの書籍です。
今井悠介『体験格差』(講談社現代新書)
この本は、日本初の「子どもの体験格差に特化した全国調査」から見えてきた日本社会の姿を考察し、「体験格差」の現実を認識したうえで、その解消に向けた議論を深め、必要な変革を起こしていくための土台の1つになることを目的に書かれた本です。
本書は以下の3部構成から成っています。
1.体験格差の実態
2.それぞれの体験格差
3.体験格差に抗う
この本の冒頭で著者は、日本初の「体験格差」全国調査の概要を紹介・説明し、次の5つの特徴を挙げています。
◆「体験格差」の実態把握を目的とすること
◆「小学生」の保護者を対象としたこと
◆「全国」規模の調査としたこと
◆「体験」の具体的な範囲を定めたこと
◆「相対的貧困」の境界線を意識して設計したこと
本書の前半では、「体験格差の実態」について以下のポイントを説明しています。
◆ 小4までは「学習」より「体験」
◆ 体験への年間支出は、放課後の活動が多く、スポーツ系・文化系はほぼ同額
◆ 体験を諦めた理由は「保護者の経済的理由」
◆ 年収300万円未満の家庭では、半数以上が「放課後の体験」がゼロ
◆ 休日の活動で、自然体験や旅行も地域差より「お金」の差から
◆「楽しい思い出」は、つらいことに直面したときの心の支えに
◆「親の体験の差」が「子どもの体験の差」に大きく影響
◆ 子どもにとって「体験」は、贅沢品ではなく必需品
この本の中盤では、「それぞれの体験格差」について解説しています。主なポイントは次の通りです。
◆ 子どもは親の苦しみを想像する
◆ 貧困と孤立の中を生きる親子
◆ 選択肢が狭まっていく
◆ 体験の少ない子ども時代は繰り返されていく
本書の後半では、「体験格差に抗う」ついて説明しています。主なポイントは以下の通り。
◆ 体験格差の実態調査を継続的に実施する
◆ 体験の費用を子どもに対して補助する
◆ 体験と子どもをつなぐ支援を広げる
◆ 体験の場で守るべき共通の指針を示す
◆ 体験の場となる公共施設を維持し活用する
この本の締めくくりとして著者は、「困難を抱える青年期の若者たちの姿をこの目で見てきたからこそ、私は子ども時代の『体験格差』をなくし、子どもや若者が生きやすい社会をつくりたいと思っている。」と述べています。
あなたも本書を読んで、連鎖するもうひとつの貧困「体験格差」について、全国調査による実態を知り、日本社会の課題を考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【3411日目】