「日本の食品ロス量は、632万トン(2013年度 農林水産省調べ、その後「平成26年度 621万トン」と発表)。これは東京都民が1年間に食べている量とほぼ同等だ」と指摘している本があります。
本日紹介するのは、日本ケロッグ広報室長、日本初のフードバンク、セカンドハーベスト・ジャパンの広報を委託されて多くの受賞歴を持つ、食品ロス専門家、消費生活アドバイザーの井出留美さんが書いた、こちらの書籍です。
井出留美『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(幻冬舎新書)
この本は、日本の食品ロスがいかに膨大な量になっていて、その原因を説明すると同時に、行政や企業、そして私たち消費者ができることは何かを提言している書です。
本書は以下の5部構成から成っています。
1.賞味期限のウソ
2.「これ食べられる?」を自分で判断する8つのポイント
3.捨てるコストはあなたが払っている
4.あなたは、あなたが「買うもの」でできている
5.食べ物をシェアする生き方
この本の冒頭で著者は、日本の卵の賞味期限は「夏場に食べる」のが前提で、パック後14日間(2週間)と設定されていますが、気温が低い(10度くらい)冬場であれば、産卵から57日間、つまり2カ月近くも生で食べられる、という事実を説明しています。
しかもこれらは卵を生で食べるのを前提とした賞味期限なので、賞味期限を過ぎていても加熱調理すれば十分、食べられるそうです。
こうした事例が本書では数多く紹介されていて、要するに、日本では賞味期限が厳格に設定され、かつ卸売りや小売りといった流通経路において、さらに厳しい運用ルールや慣行があるため、まだ十分に食べられる食品が大量に廃棄されている、という現実があります。
まず、ほとんどの食品で「安全係数」というものを掛けていて、本来の賞味期限より2割以上、短く設定されている、と著者は言います。つまり、安全係数は大きくて「0.8」という数字だそうです。
また、賞味期限を過ぎても、これは美味しく食べられる目安なので、本当に気を付けなければならないのは、弁当、調理パン、惣菜などに設定されている「消費期限」の方です。
さらに、スーパーやコンビニなどの小売店の多くは、短めに設定された賞味期限全体の3分の2のところに「販売期限」を設定し、そこに達すると棚から撤去するという「3分の1ルール」を運用しています。
実は、この「3分の1ルール」こそ、大量の「食品ロス」を生む大きな要因の一つだ、と本書では解説しています。但し、食品メーカーはスーパー、コンビニなど小売り大手に対して立場が弱く、この「3分の1ルール」がおかしいことを公式には発言できない、ということです。
ほかにも、スーパーなどの小売店は、当日に納品した賞味期限の表示が、前日に納品した商品の賞味期限より1日でも古いと、納品を拒否する場合がある、と言います。
このような「日付の逆転」が起きた商品は、「日付後退品」と呼ばれ、食品メーカーは1日単位で商品を管理し、その結果、トラックを頻繁に走らせて CO2 を必要以上に排出することになります。
私たち消費者も、スーパーやコンビニの棚で、棚の奥に手を伸ばして、少しでも賞味期限が先の商品を購入しようとしていないでしょうか。実はそうした購入姿勢も、食品ロスを増やす結果につながっているのです。
本書の中盤以降でも、さまざまな事例を挙げて、食品ロスが増えている原因や、どう対処していくべきかという提言が記されていて参考になります。
さらに、次にあるような衝撃の事実も紹介、解説されていて、私は感銘を受けました。
◆ 賞味期限が切れた頃が一番おいしい食品もある
◆ 食品ロスの半分は家庭から出ている
◆ 捨てるコストは消費者が負担させられている
◆ あなたは、あなたが「買うもの」でできている
◆ 食べ方のマナーは習うのに「買い方」ノマナーは習わない
◆ 食品ロスを支援に変える「フードバンク」の活動
この本の最後には、著者がいつも一般向け講演会で話をしているという、「今日から家庭でできる、食品ロスを減らすための10カ条」が提示されていますので紹介します。
1.買い物前に、自宅の戸棚や冷蔵庫にある食品の種類と量を確認する
2.空腹の状態で買い物に行かない
3.買い物では、すぐ食べるものは手前(賞味期限が近いもの)から取る
4.「期間限定」や「数量限定」、まとめ買いに注意
5.調理のとき、食材を使い切る
6.残った料理は別の料理に変身させる
7.賞味期限はおいしさの目安、五感を使って判断する
8.保存用食材は「ローリングストック法(サイクル保存)で
9.外食時に注文し過ぎない
10.残さないで食べる
確かにお腹が空いた時にスーパーで買い物をしていると、ついつい買い過ぎてしまいます。また、棚の奥に手を伸ばして日付の新しい商品を選ぶ、期間限定に弱い、など私自身、消費者としてハッとさせられる指摘です。
この本は発売直後に大きな反響を呼んで、すでに「3刷」になっている人気の新書です。あなたも本書を読んで、日本で大きな課題となっている「食品ロス」について学んでみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を