「世界経済には、日本人が見落としがちな“死角”がいくつも存在する」――そんな警告から始まる本があります。
本日紹介するのは、1987年横浜国立大学経済学部卒業後、住友銀行、大和投資顧問、第一生命経済研究所を経て、現在はBNPパリバ証券経済調査本部長・チーフエコノミスト/東京大学先端科学技術研究センター客員教授で、日経ヴェリタス「債券・為替アナリストエコノミスト人気調査」で通算11回首位を獲得した河野龍太郎(こうの・りゅうたろう)さんと、慶應義塾大学経済学部卒業後、JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会を経て2008年よりみずほ銀行チーフマーケット・エコノミストで、財務省「国際収支に関する懇談会」委員を務める唐鎌大輔(からかま・だいすけ)さんによる、国際金融のリアルを深掘りした初の対論書です。
河野龍太郎・唐鎌大輔『世界経済の死角』(幻冬舎新書)
本書は以下の7部構成から成っています。
1.外国人にとって“お買い得な国”の裏側
2.なぜ働けどラクにならないのか
3.トランプ政権で、世界経済はどう変わる?
4.為替ににじむ国家の迷走
5.日本からお金が逃げていく?
6.AIと外国人労働者が日本の中間層を破壊する?
7.変わりゆく世界
この本の冒頭で著者は、日本経済がかつてないほど世界経済に依存しつつある現状と、国際金融市場の変動の裏にある構造的なリスクを指摘します。そして、その死角を押さえずして未来の展望は描けないと強調しています。
本書の前半では、「外国人にとって“お買い得な国”の裏側」「なぜ働けどラクにならないのか」および「トランプ政権で、世界経済はどう変わる?」について、以下のポイントが解説されています。
◆ 日本の生産性低迷や賃金が上がらない背景には、組織風土や雇用制度の構造的問題
◆ 円安インフレや賃金抑制の原因は、経済と政治の関係性に根ざしている
◆ トランプ政権の通商・通貨政策は、世界経済の構造転換を促す動きである
◆ アメリカ、中国、ヨーロッパそれぞれの経済の“底力”と課題を多角的に分析
◆ 「ドル基軸通貨体制」が将来も持続するのか、その前提を問い直す視点を提示
この本の中盤では、「為替ににじむ国家の迷走」および「日本からお金が逃げていく?」について説明されています。主な視点は次の通り。
◆ 為替の乱高下や円安批判のタブー化の背景にある政治・経済の利害構造
◆ 海外資産の安全性や、海外展開が日本経済にもたらす本当の効果を検証
◆ キャピタルフライト(資本流出)のリスクと、その歴史的先例
◆ バブルの再発構造と、先進国としての地位喪失リスク
◆ 新NISAや外貨建て生命保険など、家計資産構造の変化がもたらす為替要因
本書の後半では、「AIと外国人労働者が日本の中間層を破壊する?」および「変わりゆく世界」について解説されています。主なポイントは以下の通りです。
◆ AIの発展や外国人労働者の受け入れが中間層の所得・雇用構造に及ぼす影響
◆ SNSや情報過多が社会秩序や民主主義に与える揺さぶり
◆ 人口減少国・日本における移民政策の是非
◆ 第二次トランプ政権の誕生が欧州統合の触媒となる可能性
◆ 日本が取るべき「新・地産地消戦略」と全体主義への警戒
この本の締めくくりとして著者は、「国際金融の死角を直視しなければ、日本は世界経済の荒波に飲み込まれる」と警鐘を鳴らしています。世界の構造変化を多面的に理解し、先の見えない時代を生き抜くための羅針盤となる一冊です。
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では、今日もハッピーな1日を!【3825日目】