「肥満より、大気汚染より、環境ホルモンより、食品添加物より、お酒より、あなたの健康を蝕み、寿命を縮めるものがある。それは “ 孤独 ” だ。」と述べている本があります。
本日紹介するのは、コミュニケーション・ストラテジストで「オジサン」の孤独研究家である岡本純子さんが書いた、こちらの新刊新書です。
岡本純子『世界一孤独な日本のオジサン』(角川新書)
この本は、「東洋経済ONLINE」のコラムで連載していた「世界一孤独な」日本の中高年男性、すなわち「寂しいオジサン」に警鐘を鳴らしてほしい、という編集者のリクエストに応える形で書かれたものです。
本書は以下の7部構成から成っています。
1.最も危険なリスクファクター-それは「孤独」
2.孤独なオジサンたち
3.孤独は「死に至る病」
4.孤独の犠牲になりやすいオジサン
5.オジサンたちのコミュ力の “ 貧困 ”
6.孤独の処方箋
7.孤独にならないために
この本では、孤独はどんな病気よりも寿命を縮める「死に至る病」だと指摘しています。例えば、孤独による健康への影響として、次のような研究結果を紹介しています。
◆ 孤独は冠状動脈の心疾患リスクを29%上げ、心臓発作のリスクを32%上昇させる
◆ 孤独な人はそうでない人より、20%速いペースで認知機能が衰える
◆ 孤独度が高い人がアルツハイマーになるリスクは、孤独度が低い人の2.1倍
◆ 孤独は、体重減少や運動による血圧低下効果を相殺する負の効果を持つ
◆ 孤独な人は、日常生活、例えば、入浴、着替え、階段の上り下りや歩くことなどにも支障をきたしやすくなる
また以下のように、世界の主要メディアでここ1~2年、「孤独」は人々の精神的・肉体的健康上、最も憂慮すべき問題として採り上げられている、と著者は言います。
「社会的孤立が私たちを死に追いやる」(ニューヨーク・タイムズ)
「中高年の男性にとって最大の脅威は喫煙でも肥満でもない。それは孤独だ」(ボストン・グローブ)
「慢性的な孤独は現代の伝染病」(フォーチュン誌)
そして、2018年1月17日には、イギリス政府が「孤独担当相」を新たに任命すると発表して、世間を驚かせました。メイ首相は、「孤独は現代社会の悲しい現実」と指摘し、今や看過できない喫緊の課題という認識が世界で拡がっているのです。
日本では、単身世帯数が一貫して増え続け、総世帯に占める割合は、1980年には19.8%だったが、2010年には32.4%に上昇、2035年には37.2%になると推計されています。
日本では、NPOやボランティアなどのソーシャルキャピタルが貧困で、セーフティネットがなく、都市化が孤独を加速している、と本書では述べています。
とりわけ男性が孤立感に苦しめられる要因として、著者の岡本さんは、次の2つの要因を挙げています。
◆ コミュニティ(外的要因)
◆ コミュニケーション(内的要因)
ここの詳細な分析、例えば定年退職による影響などは興味深く、詳細についてはぜひ、この本を手に取ってお読みください。
大企業のトップが退任後も、顧問や相談役として会社にしがみつくのは、「会社の部屋(個室)」、「黒塗りの送迎の車」、「秘書」の3種の神器を失うのが何よりも怖いからだ、ということです。
また男性の場合は、「忙しさ」がステータスシンボルで、「孤独で時間を持て余している」という姿をさらすのは、自分の「敗北」を認めるようなものだ、ということです。
次にこの本では、「人を孤独から救い出すカギは “ コミュニケーション ” と “ コミュニティ ” の二つだが、 “ コミュニティ ” を作り、参画するためには“ コミュニケーション力 ” は欠かせない。」と述べています。
つまり、コミュニケーション力は、人とのつながりを作るための基礎体力となるのです。
日本ではさらに、会社に対する「エンプロイー・エンゲージメント」の数値が世界の中でも突出して低い、と言う問題があります。「エンプロイー・エンゲージメント」とは、企業と社員の関係性を示す言葉で、「社員が企業に対して、どれくらいの愛着やコミットメント、忠誠心、士気や誇りを感じているか」ということです。
日本のサラリーマンが不幸である要因として、著者は以下のような8つの仮説を提示しています。
1.長時間労働
2.収入減もしくは低賃金
3.閉塞的な企業文化(前例主義、根性主義、減点主義)
4.年功序列
5.不適切な人員配置
6.セクハラ、パワハラ、マタハラ
7.硬直化した報酬・人事制度(不平等な平等主義または苛烈すぎる成果主義)
8.仕事そのものにやりがいを感じない
日本の会社というムラ社会では、全ての要因が当てはまるのではないか、と感じます。
アメリカのベストセラー作家で、アル・ゴア元米副大統領のスピーチ・ライターを務めたダニエル・ピンクは、働き手にエンゲージメントを感じてもらう条件として、「自主性」「成長」「目的」の3つを挙げています。
スタンフォード大学の研究者、エマ・セッパラの「幸せ」についての研究が最近、米国で注目を集めていて、我慢して働けば幸せになれるかもと考える日本人の「生産性」は低い、と指摘しています。
多くの脳科学の研究から明らかになったのは、一生懸命、働いて成功すれば幸せになるのではなく、幸せだからこそ、成功する、ということです。
だから最初に、幸せになることを見つけろ、とエマ・セッパラは提唱しています。
この本の後半では、男性の「孤独の処方箋」として、次のような事例が紹介されています。
◆ イギリスの Men’s Shed (男たちの小屋)
◆ イギリスの Walking Football (歩くサッカー)
◆ イギリスの Campaign to end loneliness (孤独を終わらせるキャンペーン)
◆ アメリカのシニアコミュニティ(アリゾナ州スコッツデールなど)
また、老後に向けて蓄えるべきは、「カネ」と「コネ」と「ネタ」だと著者は述べていて、とくに「ネタ」、すなわち老後の題材である「生きがい」は、次の3つの視座で見つけるべきだ、としています。
1.夢中になれるもの
2.社会が求めるもの
3.得意なもの
この本の終盤で著者は、①むっつりオヤジ、②威張るオヤジ、③ダメ出しオヤジ、④説教オヤジ、⑤昔話オヤジ、⑥自慢オヤジ、⑦キレるオヤジ、⑧文句オヤジといったオジサンの「8大禁忌症状」にならないための「コミュ力」を強化するために、以下のような練習を提唱しています。
1.「あいさつ」をする~まずは「壁」を破ろう
2.「いいね!」~ほめ上手になろう
3.「うん、そうだね」~耳を傾けよう
4.「えがお」
5.「お礼」を言う~感謝をする
そして、「私たちを健康で幸福にするのは良い人間関係に尽きる。孤独は命取りで、家族、友人、コミュニティとよくつながっている人ほど幸せで、身体的に健康でもつながりの少ない人より長生きする。」と本書では記しています。
最後に、オーストラリアで、死に近づいた患者の世話を続けてきたブロニー・ウェアさんが、8年間の経験の中で接した人たちに聞いた「死ぬ間際の後悔」を2009年にブログに綴った内容が大きな反響を読んだことが紹介されています。
そこで「死にゆく人々の5つの最も大きな後悔」として挙がったのは、以下の通りです。
1.他人が自分に期待した人生ではなく、自分が全うした人生を送る勇気を持ちたかった
2.そんなに一生懸命働くのではなかった
3.自分の思いをもっと話す勇気があればよかった
4.友人たちともっとつながりを持っておくべきだった
5.もっと自分を幸せにしようとするべきだった
「いつまでも謙虚に学び続けようとする人は若々しく、人を惹きつける。孤独対策の視点を、中高年の “ 学び直し ” や “ 生きがいづくり ” といったビジネスに生かせば、新たな市場も開けるだろう。」と著者は言います。
まさに私がこれから、ライフワークとして取り組もうとしている課題です。
あなたも本書を読んで、世界一孤独と言われる、日本の中高年男性(オジサン)の課題について考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を