「職業人生のパフォーマンスを決める要因としては、高度で複雑な仕事であれば、確か『頭の良さ』(認知スキル)がより重要になる。しかし、職業にかかわらず重要な決め手になるのは、むしろ性格の力ともいうべき性格スキルであることが、最近の様々な研究で明らかになってきている。」と述べている本があります。
本日紹介するのは、東京大学理学部数学科を卒業、オクスフォード大学・経済学博士、経済企画庁、OECD経済局エコノミスト、日本銀行金融研究所研究員、経済産業研究所上席研究員を経て、現在は慶應義塾大学大学院商学研究科教授の鶴光太郎さんが書いた、こちらの書籍です。
鶴光太郎『性格スキルー人生を決める5つの能力』(祥伝社新書)
この本は、「性格スキル」は「認知スキル」に比べ、大人になっても伸ばすことができることを指摘し、このスキルをいかにして鍛えるべきかを論じている書です。
本書は以下の5部構成から成っています。
1.性格スキルは学歴や職業人生を左右する
2.ビッグ・ファイブが人生を決めるー5つの能力の影響
3.性格スキルを伸ばす家庭環境と教育
4.性格スキルを鍛える職場と就業支援
5.性格スキル向上への挑戦ー少人数大学教育(ゼミ)の現場から
この本の冒頭で著者は、認知能力と非認知能力の違いを説明し、それぞれ「認知スキル」と「性格スキル」と言い換えています。
そして「性格スキル」を構成するビッグ・ファイブを紹介し、心理学では次の5つの分類がコンセンサスになっています。
1.開放性(Openness)
2.真面目さ(Conscientiousness)
3.外向性(Extraversion)
4.協調性(Agreeableness)
5.精神的安定性(Emotional Stability)
これら5つの特徴として、まず「開放性」は、新たな美的、文化的、知的な経験に開放的な傾向で、好奇心・想像力・審美眼として表されます。
2番目の「真面目さ」は、計画性、責任感、勤勉性の傾向で、自己規律・粘り強さ・熟慮として表れます。
3番目の「外向性」は、自分の関心や精力が外の人や物に向けられる傾向で、積極性・社交性・明るさとして表れます。
4番目の「協調性」は、利己的ではなく協調的に行動できる傾向で、思いやり・やさしさとして表れます。
最後の「精神的安定性」は、感情的反応の予測性と整合性の傾向で、不安・いらいら・衝動が少ない、という形で表れます。
それぞれをキーワードで表現すれば、開放性は「好奇心」、真面目さは「野心を持ち目標に向かって自分を律しながら、どんな困難があっても粘り強く責任感を持って努力していく資質」、外向性は「社交性、積極性」、協調性は「自分のことではなく相手のことを一番に考えたり、思いやる力」、精神的安定性はそのまま「精神的安定性」としています。
これらビッグ・ファイルの「性格スキル」は、職業成果(仕事の成果、賃金など)、寿命、健康、犯罪などの幅広い人生のパフォーマンス、結果に影響を与えうることがこれまでの研究で明らかとなっています。
仕事の成果との因果関係についてみると、「真面目さ」との関係がとくに強いことがわかっています。
次に位置するのが「精神的安定性」で、「真面目さ」と合わせた、この2つの性格スキルは、10代よりも20代、30代の方がより伸び、その後の人生の中でも伸び続ける、と言います。
性格スキ最も重要な「真面目さ」について詳しく知りたい方に、著者はダックワース著『やり抜く力 GRIT(グリット)-人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」』(ダイヤモンド社)を推薦しています。
この本によれば、やり抜く力は、次のような式で定義されています。
「やり抜く力」=「情熱」×「粘り強さ」
「情熱」=「興味」×「目的」
このほか本書では、性格スキルを伸ばす家庭環境や教育、あるいは職場や就業支援について解説しています。
最後には、少人数大学教育であるゼミについて、性格スキルの向上の観点から考察を加えています。
あなたも本書を読んで、人生を決める5つの能力である「性格スキル」について、理解を深めてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!