「50歳から備え、70歳まで働く時代に突入している」――そんな現実に向き合い、ミドルシニアのキャリア戦略を徹底的に考察した一冊があります。
本日紹介するのは、1985年生まれ、一橋大学国際・公共政策大学院公共経済専攻修了後、厚生労働省で社会保障制度の企画立案業務に従事、その後内閣府で「経済財政白書」の執筆などを担当し、三菱総合研究所エコノミストを経て現職のリクルートワークス研究所研究員・アナリストであり、『ほんとうの定年後』などの著作でも知られる坂本貴志(さかもと・たかし)さんと、1986年にリクルート入社後、営業統括部長として約160名の営業組織を率い、2025年に独立し、リクルートマネジメントソリューションズのパートナーとして、シニア社員活躍支援や企業研修設計などを手掛けている松雄茂(まつお・しげる)さんの共著による、こちらの書籍です。
坂本貴志・松雄茂『再雇用という働き方 ミドルシニアのキャリア戦略』(PHP新書)
この本は、日本社会の人口減少と少子高齢化を背景に、若手中心の戦略が限界を迎え、経験とスキルを持つミドルシニア層への期待がかつてなく高まる中で、「再雇用」という選択肢を中心に人生後半戦のキャリア構造や家計の状況を俯瞰し、その選択肢についての見取り図を示している書です。
本書は以下の6部構成から成っています。
1.高齢期キャリアの構造
2.過渡期の継続雇用
3.働く社員が直面する家計と意識の構造変化
4.悩ましい年下上司との関係
5.人事制度改革の方向性ー再雇用制度か、定年延長制度か
6.70歳雇用時代に向けた処分
この本の冒頭で著者は、「ミドルシニアは単なる補完戦力ではなく、組織の中核を担う存在である」と強調します。人口減少時代の働き方の中心に再雇用を位置づけ、その重要性を説いています。
本書の前半では、「高齢期キャリアの構造」および「過渡期の継続雇用」について、長期化するキャリアの変化と再雇用が果たす役割が描かれています。主なポイントは以下の通り。
◆ 50代・60代はキャリアの大転換期にある
◆ 再雇用は “制度” ではなく “戦略” と捉えるべき
◆ 長期化する職業人生と高齢期キャリアの選択肢多様化
◆ 人口減少時代に即戦力としてのミドルシニアに期待
◆ 長期化する職業人生の全体像をどう描くか
この本の中盤では、「働く社員が直面する家計と意識の構造変化」および「悩ましい年下上司との関係」について、再雇用社員が直面するリアルな課題が示されています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 年金繰り下げ受給や資産運用による老後生活費の補強を
◆ 課長も部長もいずれ「ポストオフ」になり、“モチベーションの低下” が最大のリスク
◆ 歳を重ねるほど、働き方の多様性は増す
◆ 誰もが年上部下になる時代、年下上司との関係性をいかに乗り越えるか
◆「ポストオフ」で得るものに気づくことが、未来の可能性を広げる
本書の後半では、「人事制度改革の方向性ー再雇用制度か、定年延長制度か」および「70歳雇用時代に向けた処分」について、企業側の視点と今後の社会的方向性が論じられています。主なポイントは次の通り。
◆ 従業員の多様な働き方を認める
◆ 職務や成果などに見合った給与体系とする
◆ 厳正な評価を行い、納得と意欲を引き出すマネジメントを確立する
◆ 目指すべき方向性は、報酬レンジの拡大と処遇の多様化
◆ ミドルシニアは、自分らしく、選択して働く
この本の締めくくりとして著者は、「再雇用を通じて自らの可能性を再発見し、社会で再び役割を果たすことが、人生を豊かにし、日本経済全体を下支えする力となる」と述べています。
再雇用という選択は、ミドルシニア世代にとっての希望であり、日本社会にとっての必須戦略なのです。
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では、今日もハッピーな1日を!【3835日目】