日本の「失われた25年」の正体と具体的処方箋がズバリ書かれている書があります。
本日紹介するのは、マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長を経て、ビジネス・ブレークスルー(BBM)代表の大前研一さんが書いた、こちらの新刊新書です。
大前研一『「老後不安不況」を吹き飛ばせ!「失われた25年」の正体と具体的処方箋』(PHPビジネス新書)
この本は、なぜアベノミクスでは日本経済を活性化し、「失われた25年」から脱却することができないのかを、明快な論理で説明している書です。
本書は以下の3部構成から成っています。
1.問題提起編: 「老後・将来不安」こそが、日本経済長期低迷の根本原因だ
2.問題解決編①政府: 老後不安を払しょくするために、政府は何をすべきか
3.問題解決編②個人: 国が滅んでも、こうすれば個人は不安なく生きられる
本書の冒頭で著者は、優れたリーダーは、「一つのことしか言わない」と、その共通点を指摘しています。つまり、危機的な組織では、多くの問題が発生するものの、徹底的に分析していくと、一つの「根本的問題」に突き当たるので、その問題さえ解決できれば他の問題もドミノ倒しのように自然と解決していく、ということです。
そこで日本経済の長期低迷に対して、アベノミクスや安倍首相の政策はどうなのか、という評価を述べています。著者によれば、「六本の矢」はすべて失敗で、「根本的問題」が分かっていない、と指摘しています。
同様に、安倍首相が経済政策ブレインとして、意見を求めてきたノーベル経済学賞を受賞したクルーグマンや、バーナンキ元FRB議長、浜田宏一など、名だたる経済学者も、日本経済の長期低迷の背後にある「根本的問題」が分かっていないからだ、としています。
では、日本経済長期低迷の「根本的な原因」とは何か。それは、国民の「老後・将来不安」だと、本書では述べています。
異次元の金融緩和を行おうが、財政出動で公共事業を増やそうが、国民の将来不安はますます高まるだけで、国民は消費をしないし、物価上昇率2%には程遠い、ということになっています。
これが、世界でも先例のない少子高齢化が急速に進む日本社会の真の問題で、これを本書では、「低欲望社会」と呼び、「心理経済学」と名付けた経済の消費のメカニズムを、著者の大前さんは説いて来ています。
こうした原因分析を前半で述べたうえで、本書の中盤、後半では、政府の対策や個人の生き残り策として、何をすべきかを提言しています。
詳しくはぜひ、本書をお読みいただきたいのですが、私が共感する著者の主張として、重要なポイントになる点を以下に紹介します。
◆ 「老後のお金の不安」を取り除く専門家を国が養成
◆ 日本に相応しい「高齢者を駆動力とする成長戦略」
◆ 「人生の楽しみ方」を、国や企業が高齢者に提案
◆ 国全体の人員配置をゼロベースで見直し
◆ 介護人材に移民を活用
◆ 「容積率緩和」」は税金がかからない最高の経済活性策
◆ 個人でもバランスシートを作る
◆ 若手起業家を応援するベンチャー投資
◆ 自分の手で「キャッシュを生み出す技術」を身につける
◆ 「定年後の楽しみ」にとっておかず、今すぐやる
◆ 老後の充実度は40代、50代の過ごし方で決まる
◆ 「四カテゴリー × 五つ = 二〇」の趣味をつくる
本書の締め括りとして著者は、自分たちの世代が作った借金は、自分たちできれいにして、負債を先送りにするのはやめよう、と呼び掛けています。
そのために、心ある高齢者として行動するための「スローガン」として、以下の4つを提唱しています。
1.死ぬときはゼロでいいのだよ!
2.死ぬ瞬間に「ああ、いい人生だった」と思い残すことのない言葉を発するような生き方をしよう!
3.余るものがあったら、国の借金返済のために半分は寄附しよう!
4.この素晴らしい国が永続するようにできることは何でも協力しよう!
日本には1700兆円もの個人金融資産があり、その大半を65歳以上の高齢者が保有し、一人平均3500万円ものお金を残して死んでいく、と言います。
一生不安を抱えたまま生き続け、「死ぬときがいちばんお金持ち」という、おかしなことになっている、日本社会の現状を根本から改革するために、本書の提言は極めて示唆に富んでいる、と言えるでしょう。
あなたも本書を読んで、日本経済の長期低迷の「根本的原因」に目を向け、「老後の将来不安」を払しょくする行動をとりませんか。
速読法・多読法が身につくレポート 『年間300冊読むビジネス力アップ読書法「17の秘訣」』 を無料で差し上げます。ご請求はこちらをクリックしてください!
https://jun-ohsugi.com/muryou-report
では、今日もハッピーな1日を