「お金の不安は、あなたの中ではなく、社会の物語の中にある」――そんな視点から、働くこと・生きること・稼ぐことを根底から問い直す一冊があります。
本日紹介するのは、1978年生まれ。東京大学入学後、国際大学対抗プログラミングコンテストアジア大会で入賞し、同大学大学院情報理工学系研究科修士課程を修了。2003年にゴールドマン・サックス証券株式会社に入社し、以後16年間、日本国債、円金利デリバティブ、長期為替などのトレーディングに従事。2019年に退職後は、子育てをしながら中高生への金融教育を行い、「お金と社会の関係」をわかりやすく伝える活動を続ける田内学(たうち・まなぶ)さんが書いたこちらの書籍です。
田内学『お金の不安という幻想 一生働く時代で希望をつかむ8つの視点』(朝日新聞出版)
この本は、「老後が不安」と投資に走る若者や、「稼ぐ人が偉い」と信じる子どもたちの姿を通して、現代社会を覆う “お金の幻想” を見つめ直し、不安を希望に変えるための8つの視点を提示する一冊です。
投資でも節約でもなく、「お金に支配されず、自分の軸で生きる力」を取り戻すための実践的哲学が描かれています。
本書は以下の4部構成から成っています。
第一部 整理する――「外」に侵されない「内」の軸
第二部 支度する――「内」に蓄える資産
第三部 直視する――変えられない「外」の現実
第四部 協力する――「内」から「外」を動かす可能性
本書の前半では、「整理する」「支度する」という2つのステップで、“不安に支配されない軸” を自分の中に築く方法を提示しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 「焦り」や「不安」は、メディアやビジネスによって作られている
◆ 投資で成功した人を真似ても、社会構造が違えば再現できない
◆ 「会社に守られる」という幻想を捨て、働く意味を再定義する
◆ 「愛」や「仲間」といった“非金銭的資産”こそ、人生を支える
◆ 「稼ぐ力」とはスキルではなく、“他者に必要とされる力”である
この本の中盤では、「直視する」現実として、少子高齢化・人口減少・円安・労働力不足といった経済の構造問題を踏まえ、お金に頼りすぎる危うさを指摘しています。主なポイントは次の通りです。
◆ 「稼ぐ人が偉い」という価値観が社会の分断を生む
◆ 「老後2000万円問題」の裏にある“世代間の奪い合い”を直視する
◆ 経済を支えるのは「カネ」ではなく「ヒト」――人口こそ最大の資産
◆ 「お金さえあれば」の幻想が崩壊しつつある現実
◆ 不安の正体は“変化への抵抗”であり、希望は“共に変わる”ことで生まれる
本書の後半では、「協力する」というテーマのもとに、個人の行動が社会を変える可能性を描いています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 「仕事を減らす」とは、価値を共有して分け合うこと
◆ 「奪い合い」から「分かち合い」へと発想を転換する
◆ 投資とは“お金を動かす”ことではなく、“社会を育てる”こと
◆ 若者の挑戦や新しい価値観が、未来の経済を再構築する
◆ 危機感の中にこそ、希望を見いだせる社会を目指す
この本は、お金のテクニックではなく、「どうすればお金に振り回されずに生きられるか」という根源的な問いに向き合う思想書です。
誰もが不安を抱える時代に、「お金の不安という幻想」を見抜き、自分らしく働き、つながりながら生きるヒントを与えてくれる一冊といえるでしょう。
ビジネス書の紹介・活用法を配信しているYouTubeチャンネル『大杉潤のYouTubeビジネススクール』の「紹介動画」はこちらです。ぜひ、チャンネル登録をしてみてください。
https://www.youtube.com/channel/UCIwJA0CZFgYK1BXrJ7fuKMQ
では、今日もハッピーな1日を!【3883日目】