「年金をより多く受け取るためには、どうしたらいいのか」と言う視点に立って、その『指標』を示すことが大切なのだ」と述べて、ひとつの「大きな指標」を示すことを徹底した本があります。
本日紹介するのは、1968年島根県隠岐の島生まれ、慶應義塾大学商学部を卒業後、全日本空輸株式会社(ANA)入社、東京商工会議所産業政策部へ2年間出向し、年金制度改革などの政策提言活動に関わり、ANAを早期退職した後、増田社会保険労務士事務所を開業、年金相談や企業の人事制度構築、人材研修などを行っている増田社会保険労務士事務所所長、社会保険労務士、2級ファイナンシャルプランニング技能士の増田豊さんが書いた、こちらの書籍です。
増田豊『結局、年金は何歳でもらうのが一番トクなのか』(青春新書)
この本は、みなさんが「生涯にわたって受け取る年金の総額をもっとも多くするにはどうしたらいいのか」という指標を示す書です。
本書は以下の5部構成から成っています。
1.年金大改正「何が、どう変わったのか」
2.会社員の年金「何歳からもらったほうがトクか」①<基本戦略・編>
3.会社員の年金「何歳からもらったほうがトクか」②<配偶者との年齢差で調整・編>
4.会社員の年金「何歳からもらったほうがトクか」③<65歳以降の生活費で調整・編>
5.自営業・フリーランスになったら「何歳からもらったほうがトクか」
この本の冒頭で著者は、「人生100年時代といわれ、健康寿命が延びて、高齢者や女性の就業が進み、定年間近の中高年層の副業など多様な働き方が浸透しています。多くの人が『年金、どうしたらいいのでしょう』と悩まれる理由は、自分を取り巻く暮らし、価値観やライフプランが大きく変化している中にあって、さて第二の人生をどう過ごそうかと真剣に考えているからにほかなりません。」と述べています。
本書の前半では、「年金大改正ー何が、どう変わったのか」について、以下のポイントを解説しています。
◆ 改正ポイント1:受給開始年齢のさらなる繰り下げー75歳まで繰り下げ可能に
◆ 改正ポイント2:在職老齢年金の減額基準が大幅に緩和(月額28万円⇒47万円)
◆ 改正ポイント3:在職定時改定(65歳以上で働きながら年金受給額が増える)
◆ 改正ポイント4:非正規雇用など短時間労働者が厚生年金に加入しやすくなる
◆ 改正ポイント5:繰り下げ待機期間中の「つなぎ資金」に iDeCo 活用しやすくなる
◆ 生涯受け取る年金総額をもっとも多くする「年金戦略」を自分で考え実行せよ
◆ 受給開始の75歳まで繰り下げで、年金額が最大1.84倍に
◆ 老齢基礎年金と老齢厚生年金のダブル繰り下げで「夫婦で年額500万円」にも
◆ 中高年からパートで働き始めても、将来の年金受給額を増やせる
◆ 加入できる年齢を65歳からさらに拡大することも検討している iDeCo
この本の中盤では、「会社員の年金ー何歳からもらったほうがトクか ①<基本戦略・編>」および「会社員の年金ー何歳からもらったほうがトクか ②<配偶者との年齢差で調整・編>」について、著者の見解を説明しています。主なポイントは次の通り。
◆「プラス12年の法則」:年金の受給開始を65歳よりも繰り下げた場合、受け取り開始年齢に12歳プラスした年齢で、65歳から受給していた人に追いつく
◆ 70歳から受給開始した人が「65歳から受給していた人」に追いつくのは、81歳10ヶ月
◆ 75歳から受給開始した人が「65歳から受給していた人」に追いつくのは、86歳10ヶ月
◆ 70歳から受給開始した人が「70歳から受給していた人」に追いつくのは、91歳
◆「プラス12年の法則」と平均余命から考えると、70歳から受給開始(5年繰り下げ)がベストの選択
◆ 健康寿命を考慮して、元気なうちに受け取るという選択も
◆ 繰り下げ受給の待期期間中に「急にお金が必要」になったら「一括請求」できる
◆ 待期期間中に「一括請求」しても増額分が反映される新ルール
◆ 受け取れたはずの年金がもらえなくなる「5年時効ルール」には要注意
◆ 70歳以降の繰り下げにおいても様々な死角(生きている一括請求と死んだ場合の差)
◆ 夫婦ふたりの年金総額を増やす戦略の基本も「70歳まで受給繰り下げ」
◆ 夫婦で受け取る年金を最大化するポイントは「夫婦の年齢差」にあり
◆「夫婦の年齢差5年以内」なら、加給年金を受け取らず、70歳まで繰り下げがトク
◆「夫婦の年齢差5年超」なら、厚生年金は繰り下げず、65歳から加給年金を受け取る
◆ 年金受給の繰り下げでは、「65歳以降の生活費」をどうするかが最大の問題
本書の後半では、「会社員の年金ー何歳からもらったほうがトクか ③<65歳以降の生活費で調整・編>」および「自営業・フリーランスになったらー何歳からもらったほうがトクか」について考察しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 待機期間の生活費を制する者が年金を制する
◆ 夫婦で生涯にわたって受け取る年金総額を最も多くするには、①70歳からの受給に繰り下げる、②夫婦の年齢差に応じて加給年金の受け取りを検討、③妻の年金は70歳からに繰り下げ
◆ 年金空白期間の生活費を手当てする4つの方法:①70歳まで働く、②貯蓄を取り崩す、③年金をもらいながら足りない分を働く、④年金をもらい、足りない分は貯蓄を取り崩す
◆ 70歳までの生活費をまかなうベストな選択は、夫婦ともに70歳まで働き、年金を繰り下げる
◆「47万円ルール」は年金を繰り下げている場合も適用されるので注意
◆ 夫婦で70歳まで受給を繰り下げた場合の生活費は「年間370万円」
◆ 70歳以降、万が一のことを考えて残しておきたい貯蓄金額は1000万円
◆ 65歳以降70歳まで働くことで増える年金額は、給与10万円で32,900円、給与20万円で65,800円、給与30万円で98,700円
◆ 平均的な会社員夫婦が年金を最大化するための4カ条:①老齢基礎年金、老齢厚生年金ともに「70歳からの受給開始に繰り下げる」が基本方針、②夫婦の年齢差が「5歳未満(夫が上)」なら夫婦とも老齢基礎年金、老齢厚生年金ともに70歳からの受給開始に繰り下げ、③夫婦の年齢差が「5歳以上(夫が上)」なら夫の老齢基礎年金のみ70歳からの受給開始に繰り下げ、夫の老齢厚生年金は繰り下げず、加給年金を受け取ることを検討、④65歳から70歳までの繰り下げ待機期間中は、夫も妻も働きながら厚生年金保険料を払い続け、70歳から繰り下げ需給を開始するのが理想的
◆「75歳までの繰り下げ」は、70歳以降もそれなりの収入を維持して働き続けられる自営業の人にとっては選択肢の一つ
◆ 自営業者・フリーランスが加入できる「国民年金基金」
◆ 自営業者の iDeCo 活用は少なくとも50代には開始したい
◆ つみたてNISAの運用期間の長さをうまく活用する
◆ フリーランスの人の年金戦略も「受給開始を70歳に繰り下げ」
この本で提唱している「年金戦略」については、新刊拙著『定年ひとり起業マネー編』(自由国民社)および前著『定年ひとり起業』(自由国民社)にて私が提唱している「定年ひとり起業5原則」、「トリプルキャリアによる生涯現役のライフスタイル」や「3つの専門性を組み合わせてオンリーワンの希少性を獲得する」という考え方と共通する部分が多く、心から共感しました。
著者の増田豊さんが説く「年金戦略」は、私の考え方とほとんど同じで、且つ、分かりやすさでは類書と比較して群を抜いている良書です。
唯一の違いは、妻の基礎年金は70歳までの繰り下げではなく、私の場合は75歳まで繰下げて「理論最高値」(40年加入、10年繰下げ)を目指すべきという点です。
本書の締めくくりとして著者は、「すべての人にとって『これがベストな年金戦略』といえるものがない」と述べています。
「年金を受け取る人の健康状態、ライフプラン、人生における価値観など、さまざまなことによって、どういう年金の受け取り方がいいのかも変わってくるでしょう。」と著者は説明しています。
あなたもこの本を読んで、「老後が安心できる年金のベストな受け取り方」を考えて、戦略を練ってみませんか。
ビジネス書の紹介・活用法を配信しているYouTubeチャンネル『大杉潤のyoutubeビジネススクール』の「紹介動画」はこちらです。ぜひ、チャンネル登録をしてみてください。
では、今日もハッピーな1日を!【2826日目】