「看取る力が生きる力になる。」― 人生の最期を迎える家族に寄り添い、手を握り、感謝や愛情を伝える。その看取りの現場には、悲しみだけではなく、家族の和解や人生の意味を見つめ直す、数々の温かな人間ドラマがあります。多死社会を迎えた日本で、在宅での看取りを支える「看取り士」たちの活動を通じて、遺される家族のための新しい「終活」を考える本があります。

本日紹介するのは、1963年大阪府生まれ、信州大学在学中に韓国・ソウルの延世大学韓国語学堂へ1年間留学し、大学卒業後、週刊誌の記者を経てフリーのルポライターとして活動している荒川龍(あらかわ・りゅう)さんが著した、こちらの書籍です。

荒川龍『看取る力が生きる力になる日:遺される家族の「終活」』(小学館新書)

日本は、年間死亡者数が増加する「多死社会」を迎えています。
高齢化が進む中で、人生の最期をどこで、誰と、どのように迎えるのかは、多くの人にとって避けて通れない問題になっています。

病院や介護施設で最期を迎える人が多い一方で、自宅で家族に囲まれて旅立ちたいと希望する人もいます。

しかし、在宅での看取りには、医療や介護の体制だけでなく、家族の理解や心の準備も必要です。

本書で紹介されるのは、そうした人生の最期に寄り添う「看取り士」たちの活動です。日本看取り士会の看取り士が実際に立ち会った事例を通じて、死を迎える本人だけでなく、遺される家族にとっての看取りの意味を考えています。

たとえば、曾祖母が亡くなる直前に手を握り、「大好き」と伝えた7歳の子ども。
認知症の母親の看取りを通じて、長年のわだかまりを解き、仲直りすることができた50代の姉妹。

不仲だった94歳の祖母と74歳の父親が、人生の最期に和解する姿を見届けた孫。
さらに、88歳の祖父の死に対して、15歳の孫が「おめでとう」と伝え、笑顔の通夜を迎えた家族の物語も紹介されています。

これらのエピソードから伝わってくるのは、看取りとは、単に死を見届けることではなく、残された時間を通じて家族が向き合い、思いを伝え合う機会でもあるということです。

本書は以下の4部構成から成っています。

1.看取る力が生きる力になる

2.人生の最期を病院任せにしなかった理由

3.死に方は生き方を映す鏡

4.人の温もりの中で旅立つ「在宅ひとり死」

 

本書の前半では、看取りの現場で生まれる家族の絆と、人生の最期を迎える場所の選択について、以下のポイントを説明しています。

◆ 看取りは、本人だけでなく遺される家族にとっても大切な経験になる

◆ 最期に感謝や愛情を伝えることで、家族に温かな記憶が残る

◆ 看取りをきっかけに、長年のわだかまりが解けることもある

◆ 最期を迎える場所は、本人の希望を尊重して選ぶ

◆ 在宅での看取りには、医療・介護の専門職との連携が欠かせない

 

この本の中盤では、人生の最期に表れる生き方や、人間関係のあり方について解説しています。主なポイントは次の通り。

◆ 人生の最期には、それまで築いてきた人間関係が映し出される

◆ 死を迎える前に、自分の思いや希望を周囲に伝えておく

◆ 看取りの時間は、家族が向き合い、思いを伝え合う機会になる

◆ 死を悲しみだけで捉えず、人生を生き切ったことへの敬意を持つ

◆ 「どう死ぬか」を考えることは、「どう生きるか」を考えることにつながる

 

本書の後半では、ひとり暮らしの高齢者の看取りと、遺される家族のための終活について考察・提言しています。主なポイントは以下の通りです。

◆ 家族と同居していなくても、人の温もりの中で最期を迎える選択肢がある

◆ ひとり暮らしの在宅看取りには、医療・介護・地域の支援体制が必要になる

◆ 看取りを家族だけの責任にせず、専門職や地域の力を借りる

◆ 終活は、亡くなる本人だけでなく遺される家族のためにも必要になる

◆ 後悔を抱え込まないよう、元気なうちから家族で話し合っておく

 

本書を読んで最も印象に残ったのは、「終活」は亡くなる本人だけでなく、遺される家族のためにも必要であるという点です。終活というと、財産整理、遺言書、葬儀やお墓の準備などを思い浮かべる人が多いでしょう。

しかし、それ以上に大切なのは、人生の最期をどう迎えたいのかを家族と話し合い、感謝や愛情を伝えておくことではないでしょうか。看取りの経験は、遺された人が自分自身の人生や家族との関係を見つめ直す機会にもなります。

一方で、在宅での看取りがすべての人に適しているわけではありません。本人の病状や希望、家族の状況を踏まえ、医療・介護の専門職と相談しながら選択することが重要です。

「よい看取り」とは、場所ではなく、本人の意思が尊重され、安心して最期を迎えられること。人生100年時代の終活、親の介護、家族の看取りについて考える人に、ぜひ読んでほしい一冊です。

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では、今日もハッピーな1日を!【4246日目】