「人口減少社会における居住は、個人にも地域にも、社会にも今や大問題。」と警鐘を鳴らしている本があります。
本日紹介するのは、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授の大月敏雄さんが書いた、こちらの書籍です。
大月敏雄『町を住みこなす-超高齢社会の居場所づくり』(岩波新書)
この本は、人口減少社会にあって、まちが大きく変化していく中で、人々が住まいに求めるものがどう変わり、どのように住みこなしていくのか、について考察しているものです。
とくに建築計画学を専門とする著者が、「使われ方調査」や「住み方調査」などを通じて、供給された建築物がその設計意図通りに使われているかどうかを観察し、使われ方に変化があれば原因を探り、さらに未来の生活と空間のありようを研究する視点から書かれている点が興味深く読めます。
本書は以下の5部構成から成っています。
1.時間-人生のスパンで住宅を考える
2.家族-十家族十色の暮らし方
3.引越し-「Gターン」がつくる生活の薬箱
4.居場所-町のあちこちに主感のある場を
5.町を居場所にするために-居場所で住まいと町をつなぐ
この本では最初に、日本の住宅政策の歴史と住まい方の変化について述べられています。日本の公的ハウジングや、ニュータウンの変遷、民間住宅開発などに触れた後、町の「老い方」および町の機能の多様化を解説しています。
続けて、家族と住居に関する考察が記されていて、本書での著者の結論は、「家族それぞれによって、暮らし方もさまざま」というものです。
とくに、子育てや子供の成長に合わせて行う、「近居」という形態について、具体的に事例を述べ、さらに今後の町の多様性が近居を可能にする、と提唱しています。
この本の中盤では、「引越し」を取り上げ、「住み替え」、「ゆるい定住」、「集合住宅内での住み替え」など、様々な「引越し」の形態を紹介しています。
さらに、よく知られる「〇〇ターン」と呼ばれる引越しの定義を、以下のように整理しています。
◆ Uターン: いったん都会に出た後に、生まれ育ったエリアに戻る
◆ Jターン: 生まれ育ったエリアまでは戻らないが、近くのエリアまで戻る
◆ Iターン: これまで縁もゆかりもなかったエリアに移住する
◆ Oターン: Uターンしたが田舎に馴染めずに再び都会へ戻る
◆ Cターン: 子育てをきっかけとして移住する
◆ Gターン: 同一町丁目内での引越し
この中で、今後の人口減少社会において、町の機能が多様化する中で、著者はGターンに注目すべきだ、ということです。
本書の後半では、「居場所」についての考察がなされています。被災地の仮設住宅の問題や、孤独死をどう防いでいくのか、さらに、地域コミュニティのあり方についても、その必要性を指摘しています。
そして最後に、超高齢社会において、町を「居場所」にするために、求められる地域包括ケアシステム、町の成長、引越しのあり方が述べられています。
著者の大月さんの研究は、これまで「面白いけど役には立たない」と言われてきたそうですが、日本が建築物すらも余っていく少子高齢縮小社会に突入し、どうやって施設を減らし、町をコンパクトにしようかという時代になり、はじめて注目されるようになった、ということです。
あなたも本書を読んで、超高齢社会において、「居場所」をつくるための「町の住みこなし」について考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を