「行動チャンス」の発見方法から、行動の喚起・習慣化まで、人を動かすマーケティングの新戦略を徹底解説した本があります。
本日紹介するのは、博報堂行動デザイン研究所および、博報堂に入社して一貫してプロモーションの実務と研究に従事してきた同研究所所長の國田圭作さんが書いた、こちらの新刊書籍です。
國田圭作『「行動デザイン」の教科書』(すばる舎)
この本は、今までマーケティングをモノで発想しがちだった「モノ頭」を「行動頭」に切り替えるためのアプローチを解説する本です。
本書は以下の8部構成から成っています。
1.なぜ、そのマーケティングはときどきうまく行かないのか?
2.マーケティングは、生活者の「行動」をとり合う競争だ
3.人を動かす「行動デザイン」という発想
4.リスク感とコスト意識が、行動の鍵をにぎっている
5.行動を喚起する「行動チャンス」を日常から見つけよう
6.行動デザインのつくり方・6ステップ
7.行動を誘発する仕掛け
8.なぜコンビニエンスストアの100円コーヒーは大ヒットしたのか?
本書の冒頭で著者は、最近「モノからコトへ」というフレーズや、「モノ離れ」、「断捨離」、「ミニマリズム」という言葉がよく使われるようになったことを紹介しています。
しかしながら、モノ(商品)を売るのが難しくなっている理由は、モノ離れだからではない、と本書では述べています。
モノがどんどん増えて、モノ同士がかぶってしまい、競争が激しくなっているから売れなくなっているのだ、と著者は言います。
そして、マーケティングは「モノの外」、つまり「行動」で考えなくてはいけません。人とモノは行動を介して繋がっているからです。
そこで本書が提唱しているのは、モノと人の間で今、停滞している行動を何とかする、という意味で、「行動デザイン」というアイデアです。
本書の核心は、マーケティングうを行動で再設計する、ということです。すなわち、市場を行動でとらえ直したり、感覚を行動でとらえ直したり、ゴールを行動でとらえ直したり、さらに習慣を行動でとらえ直したりします。
例えば、モノ(内容)ではなく、行動と捉えなおしたことで、成功した事例として、本書では次のようなものを挙げています。
◆ 映画の「作品(モノ)」ではなく、シネコン(シネマコンプレックス)という、ゆったり座って飲食しながら映画を楽しむという「行動」に着目して改善
◆ 食品売り場の隣りにゆっくりできるイートインスペースを作ったスーパーマーケット
◆ 自転車乗りの店長がアドバイスして試乗もできるサイクルショップ
◆ 本と雑貨を並べ、コーヒーも飲めるセレクトショップ
こうした事例に共通する特徴は、生活者の日常に中で、「どんな時間や気分の、どんな行動を捉えるのか」を明確に想定していることです。
つまり、「商品(モノ)」からではなく、お客さんの「行動」から売り方を考えている、と本書では分析しています。
本書では、続いて「行動デザイン」の考え方を説明して行きますが、ひと言で言えば、「市場」とは、生活者の「行動」の総和である、と考え、「行動量」(=ひとり当たりリソース投入量×参加人数)に着目します。
こう考えると、「競合」という概念が変わってきます。今までは、隣りに並んでいる商品でしたが、これからは、自らの市場を代替してしまう、全く違う商品やサービスが「競合」になります。
これからは、生活者のどんな行動をとり合うかという競争になるのです。すべてのビジネスの基盤は、顧客一人ひとりの行動(購買・使用)で形成されている、ということです。
本書の後半では、人はなかなか行動しない、という性質を理解し、「リスク感」と「コスト意識」という、「行動の鍵」について、分析・解説しています。
行動を促すための手法として、本書では以下のような事例を挙げていて、興味深く読めます。
◆ レーンチェンジ法(近くのポジションに置き直す)
◆ 行動を「フレーミング」する(脳が覚えやすい枠組み=フレームを提示)
◆ 行動スイッチ(商品や行動が想起される瞬間)
◆ 行動チャンス(何かをしたいけどできない未充足感)
最後に、本書で提唱している「行動デザインのつくり方・6ステップ」を紹介しておきます。
1.どれだけ動かすのか=行動ゴールを設定する
2.誰を動かすのか=ターゲット顧客を特定する
3.いつ、どこで動かすのか=行動観察から行動チャンスを発見する
4.何で動かすのか/なぜ動くのか=行動を作り出す仕掛けを設計する
5.どうやって動かすのか=全体シナリオを構築し、実行する
6.本当に動いたのか=成長を評価し、PDCAを回す
あなたも本書を読んで、「行動デザイン」という考え方で、マーケティングやビジネスを見直してみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を