『じわじわと効く投資思考法 肩の凝らない取材ウラ話 』
「投資は理屈よりも、人を見ることから始まる」――そんな感覚が、読み進めるほどにじわじわ効いてくる一冊があります。
本日紹介するのは、1965年鹿児島県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、日本経済新聞社に入社。名古屋支社、西部(福岡)支社、東京本社証券部記者・デスクを経て、『日経マネー』編集長、高松支局長などを歴任。現在は編集委員兼論説委員として活躍し、30年以上にわたり資本市場と向き合ってきた経済記者・深田武志さんが書いた、こちらの書籍です。
深田武志『じわじわと効く投資思考法 肩の凝らない取材ウラ話』(日経プレミアシリーズ)
この本は、日経ヴェリタスで連載されてきた「投資つれづれ草」をもとに、取材の現場で拾われた “投資の周辺にある本質” を、軽やかな筆致でまとめた一冊です。数字やテクニックではなく、人・企業・考え方に焦点を当てた内容が、あとから静かに効いてきます。
本書は以下の5部構成から成っています。
1.投資の心得について
2.企業の見方について
3.投資上達のヒント
4.企業財務あれこれ
5.投資とはなんだろうか
本書の前半では、「投資の心得」として、相場に向き合う際の姿勢や考え方が語られます。経験豊富な記者だからこそ見えてくる、投資家の思考のクセや落とし穴が印象的です。主なポイントは以下の通りです。
◆「分からないことはしない」という最強のリスク管理
◆ 相場を読めるという幻想への冷静な警鐘
◆ 後追い投資が長続きしない理由
◆ 言い切る人ほど、疑ってかかる必要がある
◆ バフェットに通じる “普通” を大切にする感覚
この本の中盤では、企業や経営者をどう見るか、そして投資がどうすれば上達するのかが掘り下げられます。日常の中にある小さなヒントを見逃さない視点が光ります。主なポイントは次の通り。
◆ 大化け株の芽は、案外ありふれた場所にある
◆ 経営者を見るときは「競争心」と「持続力」
◆ 投資法に万能解はなく、自分に合う型を探すことが重要
◆ 億を稼ぐ投資家ほど、意外と地味
◆ 中高年投資家は「体力・気力」に応じた戦い方を
本書の後半では、財務指標の考え方から、「そもそも投資とは何か」という根源的な問いへと話が進みます。チャーリー・マンガーやバフェットの言葉が、深田流の解釈で語られます。主なポイントは以下の通りです。
◆ ROEやPERは “万能指標” ではない
◆ 企業の「堀」をどう見極めるか
◆ 配当型か、複利成長型かは人生観で決まる
◆ 知識は複利で効くが、詰め込みすぎは逆効果
◆ 投資は利益だけでなく「夢」を追う選択もある
本書の魅力は、肩の力を抜いて読める点にあります。しかし読み終えた頃には、投資に対する視点が確実に一段深くなっている――そんな不思議な読後感があります。
派手な成功談も、即効性のある必勝法もありません。それでも、市場と長く付き合っていくための “思考の土台” が、静かに、しかし確実に身につく一冊です。
投資に少し疲れたとき、数字やチャートから距離を置きたいときに、ぜひ手に取ってほしい良書で、お薦めです。
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では、今日もハッピーな1日を!【3938日目】








