書評ブログ

『ほんとうの定年後「小さな仕事」が日本を救う』

「定年後の仕事の実態を丹念に調べていくと浮かび上がってくるのは、定年後の『小さな仕事』を通じて豊かな暮らしを手に入れている人々の姿である。」と述べている本があります。

 

 

本日紹介するのは、1985年生まれ、一橋大学国際・公共政策大学院公共経済専攻修了、厚生労働省にて社会保障制度の企画立案業務などに従事した後、内閣府で官公庁エコノミストとして「経済財政白書」の執筆などを担当、その後三菱総合研究所エコノミストを経て、現在はリクルートワークス研究所研究員・アナリスト坂本貴志さんが書いた、こちらの書籍です。

 

坂本貴志『ほんとうの定年後「小さな仕事」が日本を救う』(講談社現代新書)

 

 

この本は、概ね60歳以降の仕事である「定年後の仕事」の実態を明らかにすることを目的に、政府統計を中心とするデータの分析、および定年後の就労者へのインタビューを通した事例を紹介している書です。

 

 

本書は以下の3部構成から成っています。

 

1.定年後の仕事「15の事実」

2.「小さな仕事」に確かな意義をかんじるまで

3.「小さな仕事」の積み上げ経済

 

 

本書の前半では、「定年後の仕事 15の事実」について分析を提示・説明しています。主なポイントは以下の通りです。

 

◆ 年収は300万円以下が大半

◆ 生活費は月30万円弱まで低下する

◆ 稼ぐべきは月60万円から月10万円に

◆ 減少する退職金、増加する早期退職

◆ 純貯蓄の中央値は1500万円

 

◆ 70歳男性就業率45.7%、働くことは「当たり前」

◆ 高齢化する企業、60代管理職はごく少数

◆ 多数派を占める非正規とフリーランス

◆ 厳しい50代の転職市場、転職しても賃金は減少

◆ デスクワークから現場仕事へ

 

◆ 60代から能力の低下を認識する

◆ 負荷が下がり、ストレスから解放される

◆ 50代で就労観は一変する

◆ 6割が仕事に満足、幸せな定年後の生活

◆ 経済とは「小さな仕事の積み重ね」である

 

 

この本の中盤では、「小さな仕事に確かな意義を感じるまで」をテーマに、次の定年後就労者7名の事例を紹介しています。

 

1.再就職先で1プレーヤーとして活躍

2.週末勤務で会社を支える

3.包丁研ぎ職人を目指して独立

4.近所の学校で補助教員として働く

5.同僚、患者とのやり取りを楽しむ

6.幕僚監部から看護師寮の管理人に

7.仕事に趣味に、人生を謳歌する

 

 

本書の終盤では、「小さな仕事の積み上げ経済」について考察しています。主なポイントは以下の通り。

 

◆ キャリアの転機にどのようなスタンスで向き合うかで定年後に幸せに働けるかが決まる

◆ キャリアの転機は人によって異なり、50代~70代まで幅広いが、真摯に向き合うこと

◆ 定年後キャリアの転機は、第一線から外れた後にどのように働くかということ

◆ 役職や収入の向上に価値を見出す就労観が変わる

◆ 同じ土俵で戦っても競争に勝てなくなるタイミングがどこかで必ず訪れる

 

◆ 健康なうちは無理せず働く

◆ 定年後にどのくらい稼ぐべきかは家計に必要な額から逆算して稼ぐための戦略を立てる

◆ 高齢期の収入の基盤になるのは公的年金給付

◆ 再雇用制度、早期退職、専門職として転職、非正規雇用、フリーランスなど多様な仕事に目を向ける

◆ 生涯現役社会では、誰でもこれまでと同じように働けなくなる時期は必ず経験する

 

◆ 中高年の人事管理では、年齢による管理は緩めていく方向に

◆「個別対応」の人事制度設計が理想だが、評価・運用は難しく、折り合いは必要

◆ 職能給、成果給、役割給、ジョブ型と言われる職務給など試行錯誤は一定の成果

◆ 企業の報酬体系に共通の正解はないが、役職の任期制は一つの方向

◆ ペイパフォーマンスの徹底が大切

 

◆ 人の就業期間は長期化、無理のない仕事で適正な賃金が得られる市場環境を

◆ 少子高齢化が加速する日本は「労働供給制約社会」に

◆ 多くの地方で「生活に身近な仕事」がますます大切に

◆ コンビニでの販売、飲食店の調理や接客、ドライバーや配達員、介護や建設など生活に密着した仕事で人員不足に

◆ 定年後の仕事は、生活に密着した「小さな仕事」

 

◆ 定年後に誰でも幸せに働き続けられるためには、仕事の質を高めていくこと

◆ 日本の労働市場にある仕事を、経営者や消費者のためでなく働き手(生産者)のためのものに変えていく

◆ 逼迫した労働需給が仕事の質を高めていく

◆ 労働者の希少価値により賃金引上げ、労働時間の減少・有給休暇の日数増加

◆ AIやロボットによる機械化・自動化が今世紀最大の技術的課題に

 

◆ イノベーションによってロボットと人との協業

◆ 安くて質の高いサービスと消費者優位の日本市場が日本人の働き方をいびつに

◆ 日本の生産性が低いのは、サービスの質の高さに評価が見合っていないため

◆ 無理のない仕事と豊かな消費生活との両立を

◆ 消費者変調の市場が、働き続けるより引退して純粋消費者になる方が得をする社会に

 

 

この本の締めくくりとして著者は、「現代における『ほんとうの定年後』は、誰もがその時々の状態に合った『小さな仕事』に従事しながら、無理のない仕事と豊かな消費生活を両立している姿にある」と述べています。

 

さらに、「定年後の就業者の多くが、無理のない仕事と豊かな生活を両立しながら、幸せに暮らすことができている」と強調しています。

 

 

あなたも本書を読んで、定年前のキャリアから定年後のキャリアへの移行プロセスを考えてみませんか。

 

 

ビジネス書の紹介・活用法を配信しているYouTubeチャンネル『大杉潤のyoutubeビジネススクール』の「紹介動画」はこちらです。ぜひ、チャンネル登録をしてみてください。

 

 

では、今日もハッピーな1日を!【2870日目】