「人は生まれて育って、社会生活を営み、やがて老いていくのですが、学歴は、その初めの段階で一人ひとりが手にする『人生の切符』のようなものです。それゆえに、後の60年あまりの人生に格差をもたらし続ける要因となっています。」と述べている本があります。
本日紹介するのは、大阪大学大学院人間科学研究科博士課程を修了し、現在は同大学院教授の吉川徹さんが書いた、こちらの書籍です。
吉川徹『学歴分断社会』(ちくま新書)
この本は、「学歴分断社会は、どのようにして生じたのか、そこに解決すべき問題はないのか」について、最新かつ最大規模の社会調査データを活用し、気鋭の社会学者がこれまでタブー視されてきたことに鋭く切り込んだ書です。
本書は以下の7部構成から成っています。
1.変貌する「学歴社会日本」
2.格差社会と階級・階層
3.階級・階層の「不都合な真実」
4.見過ごされてきた伏流水脈
5.学歴分断社会の姿
6.格差社会論の「一括変換」
7.逃れられない学歴格差社会
この本の冒頭で著者は、大学進学率50%のところには、調整しなくても頭打ちになるような「ガラスの天井」があることがわかった、と述べています。
それは、日本社会では大学の側の門戸の広さ、少子化による18歳人口の漸減、大卒者を受け入れる産業界の雇用の数、高校生の進学希望、親の進学希望など、大学進学にかかわるいずれの要素をとっても、この境界線がほぼ50%あたりで均衡するように作用しているからだ、と著者は分析しています。
本書では、18歳の岐路で、短大・大学に進学した大卒層と、残り半分の非大卒層との境界線に注目し、「学歴分断線」と呼んでいます。
この分断線に著者が注目する理由は、この分断線が、学校教育法の定める公的な分け方に従ったものだ、ということです。
ここで日本に特有な仕組みとして、成人の高校卒業率が91%とほぼ全員が高校までは出ていること。世界では韓国と日本以外にはない現象で、欧米では、学歴を振り分ける仕組みは、進級するごとにライバルの数が減っていく生き残り競争(多分岐型)になっています。
本書が問題にしているのは、日本社会で起こっている50:50という比率に分かれる「学歴分断線」が、親世代と子世代の間で受け継がれ、同じ形で繰り返されていることです。
この本の後半では、現代日本社会における様々なキーワードも、「学歴分断社会」という見方の中で説明できることが多いと指摘しています。主な論点は以下の通りです。
◆ 格差社会と階級・階層
◆「下流社会」の正体は高卒層
◆ パラサイト・シングルの誕生
◆ 希望格差(インセンティブ・ディバイド)
◆ ライフコースの二極化
◆ ニートの増加と大学全入時代
こうした社会の中で、著者は「学歴アファーマティブ・アクション」を提言しています。アファーマティブ・アクションとは、貧困や不安定な生活が親から子へと引き継がれることがないよう、社会的な弱者が大学進学や就職などをするときに、優遇措置を講じる、というものです。
アメリカでは黒人やヒスパニック、母子家庭などがこうした政策の対象となってきました。
こうした政策を通して「学歴共生社会」をめざすことを本書では説いています。
この本と併せて、著者の最新著書である『日本の分断~切り離される非大卒若者(レッグス)たち~』(光文社新書)を読むことで、現代日本社会の格差の本質が理解できるので、ぜひ一読をお薦めします。
あなたも本書を読んで、「学歴分断社会」について、改めて考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!