「注目は正義だ!」――そう信じて過激な動画を配信し続ける炎上系ユーチューバーたち。彼らの背景には、配信者と視聴者が織りなす歪んだ共犯関係が存在していることを解き明かした本があります。
本日紹介するのは、東京都生まれ、大学中退後、広告代理店勤務を経てフリーのジャーナリストとなり、東洋経済オンライン、弁護士ドットコムニュース、文春オンラインなどで社会問題や人物ルポを執筆。陽が当たりづらい世界・偏見を持たれやすい世界の現実に光を当てる記事をライフワークとし、ABEMA Primeなど報道番組にもコメンテーター出演。現在は新宿ゴールデン街や四谷荒木町でバーを経営する肥沼和之(こえぬま・かずゆき)さんが、SNS社会の闇に迫った渾身のルポルタージュです。
肥沼和之『炎上系ユーチューバー 過激動画が生み出すカネと信者』(幻冬舎新書)
本書は以下の4部構成から成っています。
1.なぜ「私人逮捕系」ユーチューバーは誕生したのか
2.私人逮捕系ユーチューバーたちの主張
3.世間は私人逮捕系ユーチューバーをどう見ているか
4.なぜネット死刑に加担するのか
この本の冒頭で著者は、市民の犯罪行為を撮影し糾弾する「世直し系」「私人逮捕系」のユーチューバーが、熱狂的な信者を獲得し、再生数や寄付金など “カネ” を生み出すアテンション・エコノミーの象徴になっている現状を描きます。そしてその活動の裏には、配信者と視聴者の間で築かれる歪んだ共犯関係が存在すると指摘しています。
本書の前半では、「なぜ『私人逮捕系』ユーチューバーは誕生したのか」について説明しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 炎上系の中でも私人逮捕系は、犯罪摘発を名目に視聴者の正義感を刺激する構造を持つ。
◆ 動画は過激であるほど拡散されやすく、再生回数が収益に直結する。
◆ 背景にはSNS時代の“注目=価値”という風潮がある。
◆ 配信者の多くは特別な権威や資格を持たない「ただの人」からの成り上がり型。
◆ 「正義」を掲げることで視聴者の共感と寄付を得やすくなる。
本書の中盤では、「私人逮捕系ユーチューバーたちの主張」および「世間は私人逮捕系ユーチューバーをどう見ているか」について解説しています。主なポイントは次の通り。
◆ 配信者は「社会のため」「犯罪抑止」を目的と主張するが、自己顕示や収益目的が透けて見える場合も多い。
◆ 一部の動画は警察との関係を悪化させ、捜査の妨げになることもある。
◆ 世間には「市民による監視社会化」への懸念が根強い。
◆ メディアや有識者からは、私的制裁や名誉毀損の危険性が指摘されている。
◆ 一方で、既存メディアが報じない事実を伝える役割を果たしているとの評価もある。
さらに本書の後半では、「なぜネット死刑に加担するのか」について以下のポイントが整理されています。
◆ 視聴者は加害者糾弾動画に快感やカタルシスを感じ、シェアやコメントで加担する。
◆ SNSアルゴリズムが過激なコンテンツを優遇し、炎上を加速させる。
◆ デマや誹謗中傷が事実より先行するケースが多発している。
◆ 配信者と視聴者が互いに煽り合い、暴走を止められない構造がある。
◆ 誰もが意図せず炎上や誹謗中傷に加担してしまう危険性を持つ。
この本の締めくくりとして著者は、「薄氷のようなデジタル社会では、誰もが加害者にも被害者にもなり得る。正義を掲げた私的制裁は、その瞬間から暴走の危険をはらんでいる」と強く警鐘を鳴らしています。
SNS時代の “正義” と “炎上” のメカニズムを知ることで、自らの関わり方を見直す契機となる一冊です。
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では、今日もハッピーな1日を!【3818日目】