90歳を超えた今もなお、「知的創造」を続けるベストセラー作家で、『思考の整理学』の著者である外山滋比古さんが、これまでの経験を通して辿り着いた「生活の極意」を伝授する書が出ました。
本日紹介するのは「日常のちょっとした工夫を習慣化すれば誰でも日々向上できるし人生もやり直せる」と説く、こちらの本です。
外山滋比古『知的生活習慣』(ちくま新書)
この本は、「よい知的習慣を身につければ何も恐れることはない」として、外山さんが生活を考えて綴ったエッセイです。肩肘はらずに、テーマごとに気楽に読み進んでいけるのが魅力です。
生活のテーマは大きな項目が次の3つで、さらにそれぞれの項目が小テーマに分かれて全部で21の習慣を挙げています。
1.頭に刺激
2.体にいたわり
3.心を豊かに
著者の外山さんは冒頭で、以前の本にも引用した「習慣は第二の天性である」というイギリスのことわざを紹介しています。生活習慣によって、人間は生まれ変わるくらい変化するということです。
よい生活習慣を身につければ生まれつきの人間よりすぐれた人間になれるという思想は近代に欠けた知恵だ、と外山さんは言います。近代教育を受けた人間にはこういう発見が難しいそうです。
生活習慣病が浮かび上がらせたのは、具体的・行動的習慣であって、食事と運動が中心のフィジカルな生活習慣です。ただ人間は、体だけでなく心も持っています。
体の生活習慣
をフィジカル生活習慣とするならば、心の生活習慣はメタ・フィジカルな生活習慣と言えます。それを著者は「知的生活習慣」と本書では呼ぶことにしました。
知識、情報のあふれる現代では、健康的生活習慣だけでは不十分です。そのために精神の不具合や障害を起こすことも多くあります。
よい知的生活習慣を身につければ精神的活力の源となって、人生を豊かにすることができます。知的生活習慣によって人間は新しい人間になることができます。その意味で生活習慣よりもいっそう大きな人生的意義があるということです。
では、外山さんが「よい知的生活習慣」として紹介しているものを以下に記していきましょう。
1.日記をつける
2.計画を立てる
3.忘れて頭を整理する
4.図書館の利用
5.辞書を読む
6.メモをつける
7.生活の編集
8.「なぜ」「どうして」
9.仲間をつくる
10.横になる
11.脚力をつける
12.声を出す
13.人の言うことを聴く
14.朝、体を動かす
15.仕事は食前
16.風邪は万病のもと
17.生活を大事にする
18.俳句・川柳-頭の体操
19.散文を書く
20.手紙を書く
21.万年筆にこだわる
どれも「至言」と呼べる「よい習慣」ばかりだと思うのですが、上記7番目の「生活の編集」は解説がないと分かりにくいでしょう。外山さんは本を数多く書かれ、雑誌の編集も経験しています。
そうした視点で見た時に、「1日の生活も編集すべき」と考えました。予定を組み、その通りはいかなくても、生活のエディターとなって整理を加えれば人生は充実したものになる、と言います。
本書のしめくくりとして著者は、「みずからを知る」ということを述べています。「自分の知らない自分のあることを知ると、生活は変化し始める」と言います。
「自らについてまったく無知である」というのはかなり大きな発見である、と外山さんは述懐し、それに気づくのが「知の始まり」で、その日々が「知的生活」ということになります。
20世紀最高の経営者と呼ばれた米GEのジャック・ウェルチ元CEOが退任の時のインタビューで「最高の経営者になれた理由」を問われて答えたひと言、「Self-awareness 」と、まったく同じ意味だと思います。
偉大な経営者も「知の巨人」も、「自分に気づくこと」の大切さを訴えた点で共通する真理を述べているのだと思います。皆さんもぜひ、生涯にわたって「知的生活習慣」を続けていけるよう、「自分」にフォーカスしてみませんか。
2020年3月20日に、YouTubeチャンネル『大杉潤のyoutubeビジネススクール』【第39回】定年後に最も大切な「知的生活習慣」にて、紹介しています。
では、今日もハッピーな1日を!