新型コロナウイルスに揺れる中国、春節明けの上海株式市場大暴落、全国人民代表会議の延期など最大の危機と言われる習近平政権や、半年以上も抗議デモが続く香港、台湾・蔡英文総統の再選・高支持率など、アジアの第一線ジャーナリストによる渾身の現地ルポと言える本があります。
本日紹介するのは、1965年埼玉県生まれ、東京大学教育学部卒業、国際情報学修士、現在は、講談社『週刊現代』特別編集委員、『現代ビジネス』東アジア問題コラムニストで、明治大学国際日本学部講師(東アジア国際関係論)の近藤大介さんが書いた、こちらの書籍です。
近藤大介『アジア燃ゆ』(MdN新書)
この本は、中国、香港、台湾、北朝鮮に関して、小田実のベストセラー『何でも見てやろう』の精神で、それぞれの現地ルポを敢行した記録で、著者の東アジアに関する30冊目の著作です。
本書は以下の5部構成から成っています。
1.新型コロナウイルスと中国リスク
2.荒ぶる香港-揺らぐ一国二制度
3.脱中国に向かう台湾
4.平壌の現実-小泉訪朝同行記 Ⅰ
5.中国の植民地化する北朝鮮-小泉訪朝同行記 Ⅱ
この本の冒頭で著者は、中国の習近平総書記が、この7年あまり邁進してきた「新時代の中国の特色ある社会主義」は最大の試練の時を迎えた、と述べています。
本書の最初では、習近平政権のスローガンである「中華民族の偉大なる復興という中国の夢」と新型コロナウイルスをテーマに、北京、武漢、そして「第二の首都」雄安での見聞を踏まえ、中国の「ウイルスとの戦争」を描いています。
著者の結論は、「新型コロナウイルスは、2020年代の世界秩序を変えてしまう可能性」を秘めている、ということです。
続いて、2019年6月以降、若者たちが激しいデモを起こしている香港の現地レポートを掲載しています。
そこで見えてきたのは、「一国二制度」に揺れる740万市民の苦悩と、日本に「癒し」を求める姿だった、と著者は述べています。
次に、2020年1月に、総統・副総統及び立法委員(国会議員)選挙が行われた台湾の取材レポートが記されています。
蔡英文政権は2018年11月の統一地方選挙で大敗を喫し、支持率を15%まで落としていたものの、その後V字回復を果たして1月の総統選挙では、台湾憲政史上最高となる817万票を獲得して再選を果たしました。
この奇跡の復活劇には、香港でのデモが大きく影響していますし、その後の新型コロナウイルスに対する迅速な対応にも世界から称賛の声が集まり、さらに政権の支持率は上がっています。
この本の後半では、本来、悪化する日韓関係の現状を視察する目的で、韓国での現地ルポを計画していましたが、新型コロナウイルスの影響で日韓が相互に入国禁止令を出す事態となり、現地取材を断念することになった、ということです。
その代替として、2002年と2004年の二度にわたる小泉純一郎首相の訪朝に同行した平壌レポートを2章にわたって掲載しています。
その後の日朝関係は当時から少しも動いていないため、これらのレポートは「冷凍保存」されたかのようだ、と著者は述べています。
本書の現地レポートはそれぞれ臨場感に溢れ、現地の人々の思いや指導者の目指す方向が明確に示され、示唆に富む事実が随所に見られて参考になります。
あなたも本書を読んで、東アジアの現地事情を知ることで、今後の日本がどうあるべきか考察してみませんか。
2020年6月28日に、YouTubeチャンネル『大杉潤のyoutubeビジネススクール』【第139回】東アジア問題コラムニストが見た「中国・習近平政権の危機」にて紹介しています。
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では、今日もハッピーな1日を!【2385日目】